父、豊田栄次郎と母、敏子が結婚したのは、太平洋戦争も終わりに近い、昭和十九年一月のことでした。すでにシンガポール
で足を負傷していた父が二度出征することはないはずでしたが、戦争が熾烈さを加える中半年にして再び召集され、沖縄に向
かうことになりました。運命とはいえ父母は新婚早々にして別れ別れになり、再び会うことはありませんでした。
そのような緊迫した状況の下にも関わらず父は、はるか東京に住む新妻に戦地と化す前の沖縄の生活を軽やかなタッチで
描き送り、そしてまた妻を、子を、そして国を守ろうとする覚悟のほどを淡々とそして愛を込めて綴っています。70年近い歳
月が過ぎた今でも父の手紙は新鮮な感動を与えてくれます。どんなにか生きてかえりたかったことでしょう。しかし父は帰ら
ず、戦争は終わりました。
今の日本は何と自由で平和なことでしょう。この平和な国日本で静かに暮らせる幸せを、沖縄の土となった父と戦後を耐
えた母に感謝するばかりです。
この本には、甲府からの第一信から翌年三月十一日付けの最後の手紙、そして母へ当てたもの一通を収録してあります。
今この本が在るのは母が、空襲の中を肌身離さず保存した手紙をわが子が読めるように書き起こし、母のイトコでサンケイ新
聞記者であった久保田正明さんが手を加えてくださったお蔭です。電子版は私が監修し出版しました。
okinawa yori ai wo komete sennjyou karano tegami (Japanese Edition)
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