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    Dans le monde des variants – Japanese Translation – M (only one short story) (Japanese Edition)

    Por J H Rosny aine

    Sobre

    ※ この翻訳の冒頭部分のみを大幅に改訳した修正版です(特に冒頭部分の訳文の日本語表現に修正の余地が大きい気がしてきたためです。別の作品の翻訳も進行中のため、この作品の改訳はとりあえず冒頭部分だけにとどめておきます)。


    ・現在のバージョンは、ver. M b0.10です(2015年3月の改訂版)。

    ・ジュール・ヴェルヌと並ぶフランスSFの原点とも言える作家で、ロニー兄賞の名称の由来となった、J・H・ロニー兄(ベルギー生まれ)。

    ・これは、J・H・ロニー兄(1856年〜1940年)が最晩年の八十歳代に書いた短編小説「ヴァリアントの世界で」(1939年)の、おそらく本邦初訳となる翻訳です。

    [もし旧訳が存在する場合は、どうかご連絡お願いします。現時点での本書の訳文は、ベータ版とします]

    ・ロニー八十歳代の作品で、やや抽象度の高い内容とはいえ、みずみずしい作品です。

    ・「ヴァリアントの世界で」は1939年の作品ですが、1953年発表のアーサー・C・クラークの傑作『幼年期の終り』(『地球幼年期の終わり』)のヴィジョンを、どこか先取りしたかのような世界観を早くもかいま見せてくれる驚くべき先駆的なヴィジョンの作品のような気がします。



    ■ ロニー『ヴァリアントの世界で』からピックアップ:

    《六月のある日の夕暮れどきだった。アベルは、自分はひとりの「人間」であると同時に一個の《ヴァリアント》でもある、ということを知った。夕暮れの空に浮かぶ厚い雲が、延々と姿を変えつづけている。ツバメたちは、暑い空気のなかで、歓(よろこ)びに酔いしれたように、狂おしくさえずりながら、追いかけっこをしている。アベルは、ツバメたちを見て共感と同情でいっぱいになった。彼にしてみれば、ツバメたちは、たそがれどきの空に立ちあらわれては消える雲の国々と同じくはかないものに思われた。彼は、ぼんやりとした不安におそわれた。そして、彼がだれよりも愛する母親の手をにぎっていた。
     彼と母親の二人きりだった。ふたりは、この世界の同じ外貌を見ているように思われた。しかし母は、アベルが自分よりもはるかに事物の謎に迫ろうとしている、と本能的に感じた。母親は、少しおびえた声で言った。
    「なにを考えているの?」
     それは、ヴァリアントの世界が、人間の世界としっかり重なった瞬間だった。アベルは「啓示」を得た。
     そのときまでは、アベルの人間としての生のほうがずっと凌駕(りょうが)していたので、「ヴァリアントとしての生」は完全に外部にあるようだった。その夕暮れどきに、彼は自分が二つの「生」に関与していることを知った。そのことに動転したアベルは、そこにいる母親を知覚するのをやめた。母親は、鉱物のように固くこわばった息子の顔や、暗がりのなかで拡大した瞳孔で一点を凝視するその姿を見て怖ろしくなった。不安にかられて、息子の手を握りしめた。
    「アベル……。この子ったら!…… どうしたというの?」
     彼は見るともなく母親を見た。それから、トランス状態から引きもどされた男のように、自分がなにを言っているのか分からないままに、つぶやいた。
    「僕は別の地球で生きていたんです」
     母親には理解できなかった。息子は死のことや永遠の魂のことを夢想しているのだろう、と思った。
    「そんなこと考えるのはやめて……いい子だから……。わたしたちといっしょに生きるのですよ!」
     母親はアベルの生きる現実からまったく遠いところにいるので、彼が打ち明け話をしたとしても、いたずらに悲しくなって、心を痛めるだけだろう。彼は、大きな不安を感じながらも、母親をやさしく抱きしめ、どっちつかずの口調で同意した。
    「そんなことを考える必要は、ないんだね」と彼は言った。
     人間の世界の夕暮れどきがもどり、人間の世界の星々がもどった。彼の感じた無限は、別の世界の無限のなかへ消え入った。家族が寝静まったあとでも、アベルは、まだ目覚めていた。心が高ぶっていた。 》



    ♯ 刊行後のバージョン履歴:
    ※ かっこ内の数字は初版と改訂版を合わせた通算の発行回数。

    ・ver. M b0.10 (5):このバージョン[ベータ版]。冒頭部分を大幅に改訳。
    ・ver. M b0.04 (4):ベータ版。レイアウトの修正。「お知らせ」のアップデート。
    ・ver. M b0.03 (3):ベータ版。誤植の訂正。「お知らせ」のレイアウト変更。
    ・ver. M b0.02 (2):ベータ版。「目次」の内部リンク不具合の修正。誤植の訂正。「お知らせ」のアップデート。
    ・ver. M b0.01 (1):初版[ベータ版]。



    ※ ご購入後に出た改訂版の入手方法については、Amazon に問い合わせてみてください。
     お手数ですが、よろしくお願いします。



    ※ 目次はこのKindle本の巻頭と巻末の2ヶ所にあります。巻頭のはシンプルな目次で、巻末のは詳細な目次です。



    【各巻末の「お知らせ」コーナーについて】:

    ・巻末の「お知らせ」のコーナーで、私の〈翻訳の電子書籍〉シリーズ各巻(メリメのほか、ロニー兄、M・ルナール)からの抜粋を並べてあります(今のところ、この「お知らせ」コーナーは、〈翻訳の電子書籍〉シリーズ各巻でほぼ共通)。



    ■〈翻訳の電子書籍〉シリーズのラインナップ(2014年12月現在):

    ・『甘ったるい話 残酷な愛』[Kindle版] (モーリス・ルナール)
         〈ショートショートひとつだけ〉

    ・『ヴァリアントの世界で』[Kindle版] (ロニー兄)

    ・『マリーの庭[新訳]』[Kindle版] (ロニー兄)
         〈ショートショートひとつだけ〉

    ・『ルクレツィア・ボルジアの亡霊の棲む家[新訳〔セピア〕]』[Kindle版] (メリメ)

    ・『ルクレツィア・ボルジアの亡霊の棲む家[新訳 プラス 対訳]』[Kindle版] (メリメ)

    ・『カルル十一世の幻視[新訳〔セピア〕]』[Kindle版] (メリメ)

    ・『カルル十一世の幻視[新訳 プラス 対訳]』[Kindle版] (メリメ)

    ・『トレドの真珠[新訳 プラス 対訳]』[Kindle版](メリメ)
         〈ショートショートひとつだけ〉

    ・『イールのヴィーナス(地獄のヴィーナス)[新訳〔フル〕FDC 版]』[Kindle版] (メリメ)

    ・『地獄のヴィーナス(イールのヴィーナス)[新訳〔フル〕]』[Kindle版] (メリメ)

    [以上の〈翻訳の電子書籍〉シリーズのラインナップのうちで、本邦初訳と思われるものをベータ版と呼んでいます]



    ■ 吉澤弘之(吉沢弘之)のそのほかの翻訳歴の一部:

    ・『世界を知るためのささやかな哲学』
     (アルベール・ジャカール/ユゲット・プラネス共著、吉沢弘之訳、徳間書店)

    ・『フー・デル——ジャン=フランソワ・ジョンヴェル写真集』
     (ジャン=フランソワ・ジョンヴェル著・写真、吉沢弘之訳、トレヴィル)
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