《罰とはなんだろう? いとしいひとを、わが罪、わが魂、と形容する小説があったっけ。
たとえばそれは、見た目も不格好で味の暈《ぼや》けた卵焼き。表面が真っ黒に焦げ付いた豚の生姜焼き。砂糖を入れ忘れたパウンドケーキ。そういうたぐいのものなら、いったい、いくつでも羅列することができる。でも、あいにくと俺は、「これは罰だ」というあのときの閃きを、いまもって「直感」と言い切るほどには単純なオプティミストにはなれない。痛みや苦しみは持続するけれども、明瞭に名指してしまったら、それには対処が(仮にどんなに難易度の高いものでも)あることになってしまう。治療はほんとうに可能だと、そう言えるのだろうか? 花音《かのん》とおなじえたいのしれない泥沼でのたうちまわりつづけることのほうを、むしろ俺は選びたい。》(本文より)
BAD TASTE (Japanese Edition)
Sobre
Baixar eBook Link atualizado em 2017Talvez você seja redirecionado para outro site