《床にあぐらを掻きながら、引き出物のバウムクーヘンの封を開ける。ナイフとフォークは用意しない。水もいらない。のどに痞えて死んでもいい、と、ふとそんなことを思った俺の鼻に、高級なバニラがぷんと香り立つ。
新郎の名前は航《わたる》、新婦の名前はひかり。まさに前途洋洋だな、と――そう考えたのは、航に彼女を紹介された、はじめての時だった。そのとき描いたするどいナイフのような未来は、今日、とうとう俺の心臓に、ぐさりと突き刺さった。でも、
「航くんに友達を紹介されるのって、今日が初めてなんです」
そうはにかむように言ったひかりさんの、少しうつむいたひまわりのような笑顔も、俺はまた、忘れられない。》(本文より)
Baumkuchen start (Japanese Edition)
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