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    Nihonkizyou (Japanese Edition)

    Por AshiharaYoshihiko

    Sobre

    2014年1月現在、わが国は「日本を取り戻す」をスローガンに「日本再生」を訴えた政治家が首相の座にある。しかし、何かを「取り戻す」ためには、それはあらかじめ「喪われ」ていなければ不可能であり、「再生」には当然、その「死」が前提とされる。日本国民は、選挙によって、日本が喪われ、死したという事実を承認したのだ。では、日本はいつ死んだのだろうか? これは日本の死の時をえがく、「終わりの終わり」の物語。

    今だからこそ3.11以降ではなく、3.11以前の世界を問う。
    それは3.11以前、二度の政権交代以前、いざなみ景気とよばれた戦後最大の「好景気」が、2009年4月以降もだらだらと続いて終わらない架空の日本で――

    日本各地から巨大な骨が次々と出土した。当初、恐竜の骨と信じられていたそれらは、その異様な出現状況から人々の関心を集める。巨大骨が「日本の死の象徴」だという奇怪な説を発表した准教授が変死すると、他愛ない噂話に過ぎなかったオカルト傾向が、一気に国民の間で広まり、「日本の死」を予言したとされるトンデモ本作者の元教授が一躍、時の人となる。

    「日本の葬式」を計画し、ドキュメンタリーを撮ろうとする映画監督。それを助けるイベント会社兼タレント事務所社長。映画監督と不本意な肉体関係を続けるファッション誌の女性編集者。巨大骨情報を収集しつづける売れないミュージシャン。ドキュメンタリーに女子高生役として出演する19歳のアイドルの卵。起死回生をもくろむオカルト雑誌編集長。平凡で、どうしようもない登場人物の人生の切片をとおして描かれる、これは「日本の死」「終わりの終わり」の物語。


    <冒頭>

      最初の異変は、ゴールデンウイーク初日にあたる四月二十九日未明、このまま延々(えんえん)と続いていくであろう実感なき好況(こうきょう)、いざなみ景気と呼ばれる第十四循環(だいじゅうよんじゅんかん)が、そろそろ八十七か月目を終わろうとしている頃合(ころあ)いに、何の前触(まえぶ)れもなく起こった。
     午前二時五十八分と、三時〇五分の二回、千代田区大手町にある気象庁の地震観測計が、震度〇の無感地震を観測している。第一発見者は都営戸山(とやま)ハイツに住む田中直治さん、六十七歳。午前五時過ぎ、日課である戸山公園内の散歩中、ふと気が向いて、標高四十四・六メートルの箱根山(はこねやま)山頂を目指した。たっぷり三分もかけてようやっと登りつめ、顔を上げた田中さんは、あまりの光景に口を開けてしばらく身動きすることを忘れてしまった。自分の身長の三倍もあろうかという泥まみれの石柱(せきちゅう)が二本、石畳(いしだたみ)を割り破って、まだ曙光(しょこう)の十分に届かない青紫の空を指しながらそびえていた。
     一時間ほどたつと、公園で寝起きしているホームレスにくわえて、ランニング、ウォーキング、ラジオ体操をしに公園へやってきた人達が、野次馬の垣(かき)をつくっていた。警察、区役所、消防まで動員され、現場は一時騒然となった。消防隊員が安全性を確認している間に、警察官がバリケードテープを箱根山の狭い麓(ふもと)に張り巡(めぐ)らす。新宿区の役人達は、関係各所と連絡を取りつつ都への報告を随時(ずいじ)行い、野次馬の整理や報道機関の対応に追われた。
     当初、巨大な二柱の石塊(せっかい)だと思われていたそれが、何らかの生物の骨であると一般に公表されたのは、三日後の五月二日、東京都からの報道発表だった。


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