ロボットと人工知能の進化は目覚ましいものがあります。そうした科学技術の進歩に
よって飛躍的な生産性の向上を実現することになる人類は、やがて労働から解放されて
ゆとりある生活を手に入れるのか、それとも仕事を奪われて貧困化するのか。そもそも
ロボットが人間の労働を代行してくれるのであれば、人間の労働時間が減って人々の
生活は楽になるはずなのに、なぜ人間の仕事が奪われることで不幸を生み出す事態を引き
起こすのか。そうした矛盾はロボットや人工知能に原因があるのではなく、現代経済シス
テムの矛盾によって引き起こされます。
そして、ロボットや人工知能の進化は、そのような現代経済システムの矛盾を顕在化し、
私たちに突き付けようとしています。もし仮に、人間の労働のほとんどをロボットや人工
知能が担うような未来社会が訪れたなら、経済システムは現在と同じままであると言える
でしょうか?もし言えないのだとすれば、その変化は今日からすでに始まっていると考え
るのが妥当です。そして、今日においてその変化を受け入れないのだとすれば、それは
すなわち、ロボットや人工知能と整合性が取れなくことを意味するはずです。
それでは、現代経済システムの矛盾点とは何でしょう、そしてその矛盾の原因はどこに
あるのでしょう。それらの問題の解決法について検討するとともに、未来社会の経済
システムの方向性について思いを巡らせてみました。結論は、以下になりました。
「労働の対価としての所得ではなく、生産の対価としての所得が必要である。」
目次より抜粋
第1章 次第に明らかになる経済の矛盾
(1)科学技術の進歩が失業を生む
(2)生産性向上は高齢化問題を解決しない
(3)矛盾の原因は市場経済システムにある
・おカネが回らないとマヒする市場経済
・矛盾① 貯蓄による経済の衰退
・矛盾② コストダウンによる利潤の消失
・矛盾③ 耐久性の向上による不況
・矛盾④ 不労所得者の増加による不況
・矛盾⑤「労働の対価」という概念の消失
・不労所得を得るための道具と化した市場
・利潤に依存する現代社会の欠陥
第2章 問題の原点と解決への糸口
(1)経済はなぜ市場に依存するのか
(2)事実上の「共同生産社会」の実現
第3章 公益主導による構造改革
(1)失業支援システムの確立
(2)構造改革で移民を防ぐ
(3)少子化と年金の問題
第4章 科学技術による豊かな社会を目指して
(1)科学技術の進歩と経済成長
(2)未来社会のビジョンと科学技術の進むべき道
(文字数:約12万)
「はじめに」の部分を以下に掲載します。
はじめに
最近のテレビや新聞を見ていると、ロボットや人工知能の話題が盛んに取り上げられ、
完全無人化された生産工場やドローンによる商品の自動配送システムが記事になるなど、
自動化に関する話題をよく目にするようになりました。このようなロボット化や自動化
の技術が目覚ましい進歩を遂げる状況の中で、多くの識者から「人間はロボットに雇用
を奪われる」「人間はもっと別の仕事をしなければならない」「ロボットは新たな仕事
を生み出す」など様々な発言がされています。しかしロボットはそもそも人間の代わり
に仕事してくれる便利な存在であって、そのロボットと人間が仕事を奪い合うなどおか
しな話です。ロボットが人間の代わりに働いてくれるのに、なぜ人間はロボットのでき
ない仕事を永遠に探し続ける必要などあるのでしょうか。本来はそんな必要などないは
ずです。ロボットが人間の代わりに労働してくれることで仕事が減るのはむしろ良いこ
とのはずです。つまりロボットが雇用を奪うというこの議論はどこかピントがズレてい
るような気がするのです。
また政府や財界はマスコミを通じて「経済成長のために生産性を向上すべきだ」と盛
んに宣伝します。常識的に考えると、まさにその通りだと多くの人が考えるでしょう。
生産性の向上はロボットや機械などハードを導入する方法のほか、組織や業務などソフ
トの改革・改善によって実現されます。しかしロボットや機械、あるいは業務改善に
よって生産性が向上すれば人手が余ります。企業は人手が余れば社員を解雇してコスト
削減を図ろうと考えます。こうした状況の中で、政府や財界が主張するような労働法規
の改正を行い、労働者の解雇を容易にすれば、生産性の向上に伴って失業者が増加する
ことは当然の帰結です。生産性の向上によって失業者が増加するのであれば、それに
よって経済が成長できるとは思えません。
このような矛盾した現象はなぜ生じるのでしょうか。そしてロボットや人工知能は人
類を豊かにするのでしょうか。その答えはロボットや人工知能の活用方法に関わるので
はなく、むしろ現在置かれている経済システムそのものに関わる可能性が高いと考えら
れるのです。ところがマスコミなどで散見されるロボットや生産性に関する議論を眺め
ても、そのような論点がおよそ欠落しています。科学技術の進歩による劇的な生産性の
向上をどのように受け入れるのか。多くの識者はロボットや人工知能を現代の経済シス
テムにそのまま組み込むことが可能だとの前提で考えています。しかし現在のシステム
にそのまま組み込むとすれば、ロボットや機械による生産性の向上によって失業が生まれ、失業の増加によって国民の購買力が低下し、購買力の低下によって内需が減少し、
やがて経済がマヒしてしまうという大きな矛盾を引き起こします。このような市場経済
システムの抱える根本的な問題が正面から議論されることはほとんどなく、マスコミも
スルーを決め込んでいます。まるでひとりでに問題が解決するような前提でもあるかの
ようです。
またこれは高齢化社会の問題にも繋がります。高齢化にともなう人口減少社会に対処
するためにはロボットや人工知能の導入による生産性の向上が欠かせないといわれてい
ます。確かにロボットや人工知能によって生産性が向上できれば人口が減少しても生産
能力を高いレベルで維持することは可能なのです。しかし市場経済システムの矛盾が関
係することで、世の中のおカネが回らなくなって、その結果として年金が維持できなく
なる可能性が高いと考えられるのです。つまり少子高齢化や年金の問題はロボットや人
工知能によって生産性を向上しても解決することができず、経済システムそのものの問
題を解決する必要があると考えられるのです。
「ロボットと人工知能は人類を幸福にするか」。多くの人はロボットや人工知能などを
現在の経済システムに「そのまま組み込む」という前提で考えていますが、それは大き
な矛盾を引き起こす原因となります。本書ではその矛盾とは何かを指摘し、矛盾の原因
を考え、その対処法について検討します。そして「ロボットと人工知能は人類を豊かに
するか」という問いへの答えは、現在の経済システムに大転換を迫る結果になるはずだ
と確信しています。
よって飛躍的な生産性の向上を実現することになる人類は、やがて労働から解放されて
ゆとりある生活を手に入れるのか、それとも仕事を奪われて貧困化するのか。そもそも
ロボットが人間の労働を代行してくれるのであれば、人間の労働時間が減って人々の
生活は楽になるはずなのに、なぜ人間の仕事が奪われることで不幸を生み出す事態を引き
起こすのか。そうした矛盾はロボットや人工知能に原因があるのではなく、現代経済シス
テムの矛盾によって引き起こされます。
そして、ロボットや人工知能の進化は、そのような現代経済システムの矛盾を顕在化し、
私たちに突き付けようとしています。もし仮に、人間の労働のほとんどをロボットや人工
知能が担うような未来社会が訪れたなら、経済システムは現在と同じままであると言える
でしょうか?もし言えないのだとすれば、その変化は今日からすでに始まっていると考え
るのが妥当です。そして、今日においてその変化を受け入れないのだとすれば、それは
すなわち、ロボットや人工知能と整合性が取れなくことを意味するはずです。
それでは、現代経済システムの矛盾点とは何でしょう、そしてその矛盾の原因はどこに
あるのでしょう。それらの問題の解決法について検討するとともに、未来社会の経済
システムの方向性について思いを巡らせてみました。結論は、以下になりました。
「労働の対価としての所得ではなく、生産の対価としての所得が必要である。」
目次より抜粋
第1章 次第に明らかになる経済の矛盾
(1)科学技術の進歩が失業を生む
(2)生産性向上は高齢化問題を解決しない
(3)矛盾の原因は市場経済システムにある
・おカネが回らないとマヒする市場経済
・矛盾① 貯蓄による経済の衰退
・矛盾② コストダウンによる利潤の消失
・矛盾③ 耐久性の向上による不況
・矛盾④ 不労所得者の増加による不況
・矛盾⑤「労働の対価」という概念の消失
・不労所得を得るための道具と化した市場
・利潤に依存する現代社会の欠陥
第2章 問題の原点と解決への糸口
(1)経済はなぜ市場に依存するのか
(2)事実上の「共同生産社会」の実現
第3章 公益主導による構造改革
(1)失業支援システムの確立
(2)構造改革で移民を防ぐ
(3)少子化と年金の問題
第4章 科学技術による豊かな社会を目指して
(1)科学技術の進歩と経済成長
(2)未来社会のビジョンと科学技術の進むべき道
(文字数:約12万)
「はじめに」の部分を以下に掲載します。
はじめに
最近のテレビや新聞を見ていると、ロボットや人工知能の話題が盛んに取り上げられ、
完全無人化された生産工場やドローンによる商品の自動配送システムが記事になるなど、
自動化に関する話題をよく目にするようになりました。このようなロボット化や自動化
の技術が目覚ましい進歩を遂げる状況の中で、多くの識者から「人間はロボットに雇用
を奪われる」「人間はもっと別の仕事をしなければならない」「ロボットは新たな仕事
を生み出す」など様々な発言がされています。しかしロボットはそもそも人間の代わり
に仕事してくれる便利な存在であって、そのロボットと人間が仕事を奪い合うなどおか
しな話です。ロボットが人間の代わりに働いてくれるのに、なぜ人間はロボットのでき
ない仕事を永遠に探し続ける必要などあるのでしょうか。本来はそんな必要などないは
ずです。ロボットが人間の代わりに労働してくれることで仕事が減るのはむしろ良いこ
とのはずです。つまりロボットが雇用を奪うというこの議論はどこかピントがズレてい
るような気がするのです。
また政府や財界はマスコミを通じて「経済成長のために生産性を向上すべきだ」と盛
んに宣伝します。常識的に考えると、まさにその通りだと多くの人が考えるでしょう。
生産性の向上はロボットや機械などハードを導入する方法のほか、組織や業務などソフ
トの改革・改善によって実現されます。しかしロボットや機械、あるいは業務改善に
よって生産性が向上すれば人手が余ります。企業は人手が余れば社員を解雇してコスト
削減を図ろうと考えます。こうした状況の中で、政府や財界が主張するような労働法規
の改正を行い、労働者の解雇を容易にすれば、生産性の向上に伴って失業者が増加する
ことは当然の帰結です。生産性の向上によって失業者が増加するのであれば、それに
よって経済が成長できるとは思えません。
このような矛盾した現象はなぜ生じるのでしょうか。そしてロボットや人工知能は人
類を豊かにするのでしょうか。その答えはロボットや人工知能の活用方法に関わるので
はなく、むしろ現在置かれている経済システムそのものに関わる可能性が高いと考えら
れるのです。ところがマスコミなどで散見されるロボットや生産性に関する議論を眺め
ても、そのような論点がおよそ欠落しています。科学技術の進歩による劇的な生産性の
向上をどのように受け入れるのか。多くの識者はロボットや人工知能を現代の経済シス
テムにそのまま組み込むことが可能だとの前提で考えています。しかし現在のシステム
にそのまま組み込むとすれば、ロボットや機械による生産性の向上によって失業が生まれ、失業の増加によって国民の購買力が低下し、購買力の低下によって内需が減少し、
やがて経済がマヒしてしまうという大きな矛盾を引き起こします。このような市場経済
システムの抱える根本的な問題が正面から議論されることはほとんどなく、マスコミも
スルーを決め込んでいます。まるでひとりでに問題が解決するような前提でもあるかの
ようです。
またこれは高齢化社会の問題にも繋がります。高齢化にともなう人口減少社会に対処
するためにはロボットや人工知能の導入による生産性の向上が欠かせないといわれてい
ます。確かにロボットや人工知能によって生産性が向上できれば人口が減少しても生産
能力を高いレベルで維持することは可能なのです。しかし市場経済システムの矛盾が関
係することで、世の中のおカネが回らなくなって、その結果として年金が維持できなく
なる可能性が高いと考えられるのです。つまり少子高齢化や年金の問題はロボットや人
工知能によって生産性を向上しても解決することができず、経済システムそのものの問
題を解決する必要があると考えられるのです。
「ロボットと人工知能は人類を幸福にするか」。多くの人はロボットや人工知能などを
現在の経済システムに「そのまま組み込む」という前提で考えていますが、それは大き
な矛盾を引き起こす原因となります。本書ではその矛盾とは何かを指摘し、矛盾の原因
を考え、その対処法について検討します。そして「ロボットと人工知能は人類を豊かに
するか」という問いへの答えは、現在の経済システムに大転換を迫る結果になるはずだ
と確信しています。