〈第二篇 作戦〉の内容は、下記の目次に示す通りでありますが、とりわけここでは、孫子の曰う『善後策』は、一般に謂われている「善後策」とは似て非なるものであること、同じように、孫子の曰う『拙速』は、一般に謂われている「拙速」とは似て非なるものであること、また〈第二篇 作戦〉の中でも、とりわけ誤解されている『故に、敵を殺す者は怒りなり。』について、その真意を論じております。
例えば、『拙速』の誤解に対するその要点を述べれば次ぎようになります。則ち、「拙速」は、一般には手段の「巧拙」及びその「スピード」の意と解されています。言い換えれば、「やり方・手段が多少拙劣であっても、速戦速決、速勝に出た方が、手段の万全を期してことを長引かせるよりも有利である」ということであります。
因みに、孫子の最古の註釈者たる魏の曹操は「拙と雖も、速を以てする有らば、勝を未だ睹(み)ざる者は無きを曰うなり」と、また次ぎに古い梁の孟氏(彼の孟子ではない)は、曹操の説を敷衍(ふえん)して「拙と雖も、速を以てする有らば勝つ」と註しています。孫子の曰う『拙速』の真意に対する誤解の大本はまさにこの辺りに起因するものと言わざるを得ません。
ところで、「スピードを以てすれば勝つ」の意に相当する孫子の言は、『兵の情は速やかなるを主とし』〈第十一篇 九地〉ということになります。「兵の情」とは、兵を用うるの理・本質、「速」は、迅速の意です。が、しかし、ここで重要なことは、この言句に「拙」の文言は見当たらないということです。
そもそも『勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む。』〈第四篇 形〉を根本思想とする孫子が「手段は拙劣で良いとか、準備はいい加減で良い」などと逆立ちしても曰うはずが無いということです。準備万端が整っているがゆえに(例えば赤穂浪士の討ち入りのごとく)迅速に行動できると解するのが道理であります。
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【孫子正解】シリーズ 十三篇全体の目次
第一部 孫子兵法の学び方
・なぜ孫子兵法を学ぶのか
・管子、老子、孔子と孫子兵法との関係
・なぜ孫子兵法は難解とされるのか
・孫子の効果的な学び方(コツ)
・孫子十三篇「素読のすすめ」とそのやり方
・孫子兵法と脳力開発を併行して学ぶ意義 ・脳力開発のやり方の趣旨
第二部 孫子十三篇の理論体系と全体構造篇
・理論体系図
・各篇の趣旨と相互の関係
・脳力開発の根幹たる習慣づくり(習慣論)について
第三部 孫子の戦争観と用兵思想篇 …〈第一篇 計〉・〈第二篇 作戦〉
第四部 謀攻篇(用兵総論)… 〈第三篇 謀攻〉
第五部 戦法篇(用兵各論・基本的用兵論)
1、強者の戦法
孫子十三篇全体における不言の語 … 特に〈第三篇 謀攻〉、〈第九篇 行軍〉
2、兵力比互角の戦法
〈第四篇 形〉・〈第五篇 勢〉
3、弱者の戦法(局所集中戦略)
〈第六篇 虚実〉・〈第七篇 軍争〉・〈第八篇 九変〉
第六部 組織運用と統率篇(用兵上の諸原則)
〈第九篇 行軍〉・〈第十篇 地形〉
第七部 弱者の戦法総括篇・決戦的敵国侵攻作戦(応用的用兵論)
〈第十一篇 九地〉
第八部 火攻作戦篇(特殊的用兵論)
〈第十二篇 火攻〉・前半部
第九部 全用兵論の総結言篇
〈第十二篇 火攻〉・後半部
第十部 情報篇(先知の兵法たる孫子十三篇を総括するものであり、兵の大本を貫くもの)
〈第十三篇 用間〉
第十一部 資料篇
孫子十三篇「素読用テキスト」
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【孫子正解】シリーズ第四回 孫子の戦争観と用兵思想篇〈第二篇 作戦〉 目次
第一章 〈第二篇 作戦〉読み下し文
第二章 〈第二篇 作戦〉の構成分類……別表
第三章 篇名にいう『作戦』の意味
第四章 〈第二篇 作戦〉前段・戦争と経済
1、戦争の原理的・本質的検討と戦費の一般原則
2、本篇前段と〈第十三篇 用間〉前段との関係
第五章 〈第二篇 作戦〉中段・用兵の害
1、対多敵配慮と自己保全(戦争は勝ちを貴ぶも、その本旨は自己保全にあり)
2、孫子の曰う「善後策」の真意……一般に謂う「善後策」とは似て非なるものである
3、孫子の曰う『拙速』の真意……一般に謂う「拙速」とは似て非なるものである
第六章 〈第二篇 作戦〉後段・用兵の利
1、敵の力を逆用するための基本的理念
2、戦略レベルで敵の力を逆用する方法(その一例)
3、戦術レベルで敵の力を逆用する方法(その一例)
4、後段(用兵の利)・結言
第七章 〈第二篇 作戦〉の結言
著者プロフィール
・山梨県出身、甲斐源氏加賀美次郎遠光の後裔
・陸上自衛隊第三十一普通科連隊
・拓殖大学政経学部(拓空会OB)
・ラジオ日本・報道部放送記者、報道番組制作、都庁鍛冶橋記者クラブ他
・宝石貴金属販売会社経営
・(財)中小企業経営者災害補償事業団 教育学院副学院長
・現在、孫子塾の塾長として「孫子に学ぶ脳力開発と情勢判断の方法」オンライン通信講座、通学ゼミ講座を主宰し、関連書籍の執筆活動を行うと共に、併設する拓心観道場主席師範として「古伝空手・琉球古武術」の指導と普及に当る。
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