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    Jesus and his Disciples Part2 Middle volume Act2 (Japanese Edition)

    Por Koujun Kobayashi

    Sobre

     ローマ帝国の支配下にあったイスラエルの地で独自の教えを説いたイエスは、民衆を扇動する危険人物として告発されて十字架上で命を落とす。絶対的リーダーだったイエスを失って分裂寸前だった弟子たちは、生前の師の思いに触れて再起への道を歩もうとする。ペテロを指導者として誕生したイエスの教団は磐石な組織体制を築いてエルサレムに定着した後、ステファノの殉教を契機にイスラエルの外にも進出するようになる。教団を迫害していたサウロがダマスコで回心しただけでなく、北方のタルソスやアンティオキアにまで勢力を拡張していく。
     エルサレムでは、ローマ皇帝カリグラの皇帝崇拝要求の阻止に成功したユダヤ人が排他的民族意識を高めるが、それがユダヤ人だけでなく「異邦人」にも救いの門戸を開こうとするイエスの教団の方針と衝突する。
     異邦人問題はエルサレム教会の存亡に直結する問題となり、異邦人伝道を推進するアンティオキア教会との対立が激化する。エルサレム会議で承認された異邦人伝道が覆されたことに反発したパウロは、地中海世界全域を射程に収めた大伝道旅行を開始して次々と独自の教会を建設し、それによってイエスの教団は「キリスト教」として飛躍的な拡張を遂げることになる。

    『イエスと弟子たち第二部完全版』シリーズ構成
    上巻1「第一章 復活」「第二章 始動」
    上巻2「第三章 殉教」「第四章 回心」
    上巻3「第五章 離脱」「第六章 懇願」
    中巻1「第七章 会議」
    中巻2「第八章 弁明」
    中巻3「第九章 逆十字架」
    下巻1「第十章 開戦」前半
    下巻2「第十章 開戦」後半
    下巻3「第十一章 炎上」
    下巻4「第十二章 イエスとペテロ」

    中巻2 パウロはガラテヤ、フィリピ、テサロニケ、コリント、エフェソと、伝道旅行の道程で次々と独自の教会を建設し、各教会に書簡を出すなど世界的なネットワークを作り上げていく。パウロが思い描くローマやイスパニアをも射程に収めた壮大な世界教会構想にはペテロも驚愕するが、パウロの教会では常に問題が起こっていた。彼はエルサレムで暴行を受けた後投獄されるが、彼の裁判に臨席したアグリッパ二世が「人類の罪は十字架にかけられたキリストが背負った」という贖罪説の問題点をパウロに問い質す。

     ここでパウロが一息ついた。抑揚と緊張感のある演説に、会場にいた誰もが息を呑んで聴いていた。ヤソン、アリスタルコ、ガイオの三人も、有無を言わさずパウロの話に引き込まれ、目を見開きながら次の話を待っていた。
    「神にとって、キリストとして天から送ったイエスは最愛の息子とも言うべき存在です。アブラハムがひとり子であるイサクを捧げねばならない事態に慟哭したのと同様、神もまたそのひとり子であるイエスを十字架にかけさせる際に大変な慟哭に見舞われたと言えます。しかし神は、それほどの慟哭と苦痛に耐えてイエスを十字架にかけさせたのです。
     ではなぜ、神はそれほどの苦痛を伴いながらひとり子のイエスを十字架にかけさせたのか。それは、人類が犯してきた罪を贖うためだったのです。
     人類全体の罪を贖うためには、それに見合うほどの対価が必要となります。それはちょうど私たちユダヤの民が、神の救いを得るために毎年大量の犠牲の獣を捧げねばならないのと同じような対価です。神は今まで私たちに、救いを得るためには対価が必要だということを教えてこられました。しかし私たちの神は、自らもまた人類に救いをもたらすための対価を払おうとされた。それがイエスの十字架、それによって流されたキリストの血であり、これはいわば人類の救いのために神御自身が支払った身代金と言えます。
     おわかりでしょうか。これが私たちの神なのです。皆様の中には、神とは高いところから一方的に自分たちに命令するだけの存在ではないかとか、毎年自分たちに犠牲を要求するだけで自分からは何もしないではないか、という不満を持ち続けてきた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私たちの神とは実はそうした存在ではないのです。自ら率先して対価を払おうとし、大変な苦痛を覚悟して最愛のひとり子すら十字架にかけさせた。それもひとえに、私たちが犯してきた罪を取り除いて私たちを救いの道に導かれるためなのです。私たちの神とはこれだけ誠実であり、信じるに値する存在なのです。
     だからこそ、神を信じたいと常に願っている皆様に私は言いましょう。皆様が信じている神とは、心の底から信じるに値する存在であると。なぜなら、私たちの神とは私たち人間の悲しみや苦しみを常に知っている存在であるからです。神がアブラハムの息子殺しをやめさせたのはなぜか。それは神が、アブラハムの慟哭や悲しみを知っていたからです。そして神御自身もまた、人類の罪を贖うために最愛のひとり子であるイエスが十字架にかけられている姿に、必死に耐えたのです。
     イエスの十字架によって、神とはただ威張り散らし、妬み、怒り狂うだけの存在ではなく、私たちが信じるに値する存在であることが明らかにされたのです。だからこそ私たちは神を、そしてそのひとり子であるイエスを心底信じることができるのです」
     演説が終わって騒然とした雰囲気の中、アリスタルコが興奮した口調でヤソンに言った。
    「……いや、驚いたな。見事に最後まで引き込まれたと言うか、あんなに中身が濃くて退屈しない演説を聴いたのは生まれて初めてだよ。エルサレムの教師の中に、あんなすごい人がいたんだな……」
    「……おい、あの教師の名前は何と言ったっけ?」
    「ああ、確か、パウロと言ってたな」
    「パウロ、か……」
     この時、二人の後ろに座っていたガイオが語りかけた。
    「おい、これから皆であの人に詳しい話を聞きに行かないか? こんな機会は二度とないかもしれないからな」
     ヤソンは、普段は真面目で冷静なガイオの声に熱気がこもっているのを感じ、「何か大変なことが起こるかもしれない」という予感を覚えた。ヤソン、アリスタルコ、ガイオの三人はすぐにその場を立ち、パウロとシラスがいる場所に向かった。  ~「第八章 弁明」より

    ※完全版には廉価版にない「注と解説」を収録しています。
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