本書は、1981年2月1日から4月12日まで、エジプトからケニアまで旅した時の記録だ。1年近い世界放浪の旅の中で3カ月半がアフリカの旅になった。アフリカに行かなければ「世界旅行」にはならない、と半ば義務感にかられて行った。
インターネットも、満足なガイドブックもない時代。マラリアの予防薬は飲み続けたが、予想外の厳しい事態が待っていた。4日4晩の鉄道の旅を経て、スーダン南部のワウに着くと、そこからはトラックの荷台に乗ってサバンナの道なき道を行く旅。
あの時を思い出すと、その後、あらゆる旅が苦しくなくなった。どんなに暑くても、どんなにぎゅう詰めバスでも、どんな揺れ、ホコリでも、普通の旅ならとにかくじっと耐えていれば目的地に着く。しかし、あの時はトラック荷台に80人乗せられ、揺れるたびにまわりの鉄板などに体がこすれ「やめてくれ」と願うような拷問の旅だった。
ホテルはなく野宿。食堂もほとんどなくトラックの「キャラバン隊」で自炊。何日も透明の水を見ることがなく、濁った水にヨーチンを垂らして飲んだ。ジュバ(現在の南スーダンの首都)に着いても、水道から濁った水が出るのに愕然とした。北部ケニアのトルカナ地方は飢餓で、「キャラバン隊」が自炊夜食を終えると村人たちがひたひたと来て、落ちた残飯をついばむ。昼間、めずらしく見つけた村の食堂で食事をすると、痩せた子どもたちが群がり、食べる私たちを見続ける。こんなところを旅するのは罪だった。
アフリカの後、インドを旅したが、楽だった。少なくともどこまでも鉄道が通り、蛇口からは、飲料に適するかどうかは別にして、透明な水が出た。
こんな旅行記はもう古すぎると思っていたが、時間がたって、逆に歴史的記録として残しておく必要を感じてきた。特に南スーダンは、私が旅行した後に残酷な内戦がはじまり、250万人もの人々が死んだという。2011年に南スーダン共和国が独立したが、その後も政情不安が続き、旅行者が気楽に行ける地域ではない。何かの参考にして頂くため、出版しておこうと思った。
目次
(1)入エジプト記
(2)カイロの日々
(3)ナイルに沿って:カイロからカルツーム
(4)4日4晩の汽車の旅
(5)終着駅の街ワウ
(6)南スーダン:奴隷船の記憶
(7)ジュバ:南スーダンの中心都市
(8)トルカナ:飢餓地帯を行く
(9)ナイロビへの道
著者プロフィール:岡部一明(おかべかずあき)
1950年栃木県生まれ。若い頃から世界を放浪。1979年カリフォルニア大学バークレー校自然資源保全科卒業後、日米でフリージャーナリスト、市民団体勤務など。2001年から2013年まで愛知東邦大学経営学部地域ビジネス学科准教授、教授。専門は市民社会論。
主要著書に『市民団体としての自治体』(御茶の水書房、2009年)、『サンフランシスコ発:社会変革NPO』(御茶の水書房、2000年)、『インターネット市民革命』(御茶の水書房、1996年)、『社会が育てる市民運動 ―アメリカのNPO制度』(社会新報ブックレット、1993年)、『日系アメリカ人: 強制収容から戦後補償へ』(岩波ブックレット、1991年)、『多民族社会の到来』(御茶の水書房、1990年)、『パソコン市民ネットワーク』(技術と人間、1986年)など。
Trip to South Sudan and Kenya in 1981 (Japanese Edition)
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