船橋オート所属の本山は選手歴二十年を超えた、もうベテランと言ってよい選手だ。若き頃は将来を嘱望されたこともあったが、ある事故をきっかけに天性を感じさせるスピードと躍動感のある走りを徐々に失い、現在ではこれといった特徴のない、優勝戦には全く縁のない平凡な選手になっていた。
口の悪いファンなどはそのようなレーサーを「サラリーマンレーサー」と揶揄する。それもある意味仕方がないかもしれない。自らのお金を賭けている以上、まるで帳尻合わせのように「安全」走行する選手に対して、その視線が冷たくなってしまうのは当然のことだからだ。
ところが五月の陽がまぶしくなり始めた船橋開催のある日、本山は同僚レーサーから不可解なことを言われた。それは、本山の枠番と同じ色のウインドブレーカーを着た男が、本山のレースの時だけ何かを叫んでいると・・・・。
まちがいなく指摘通りの男がいた。しかし本山は、その現実を理解することができない。だが自分に向かって男が叫んでいることだけは確かだった。もちろん何を言っているのか、さらには正体もわかりようがない。しかし本山の中で何かが変わり始めていた。それは、久しく忘れてい110秒の世界の始まりだった。
2016年3月をもって廃止が決まっている船橋オートレーサー物語。幾多の名選手を生んだオートレース発祥の地が消えようとしている今、その鎮魂を願ったオート選手の物語。
110 seconds trajectory of: Motor bike racer story (Japanese Edition)
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