--- この世界を点すささやかな灯り ― 短歌とはそのようなものではないかと思うのです。---
一九九五年、ツアー旅行で夫とアメリカを訪れました。その際、添乗員氏の計らいでニューヨークの国連本部を見ることができました。私達を出迎えてくれたのは、大空に列を成す国連加盟国の旗という旗。翩翻と風に吹かれている様は壮観で、その美しさは今でも忘れることができません。反射的に私の目は日の丸を探していました。
また、ケネディ元大統領とジャクリーン夫人を祀っているアーリントン墓地にも参りました。銃弾に倒れた若き大統領のため夫人が点した灯が、国民の手で「永遠の炎」となって絶えることなく燃えつづけているのです。私はアメリカのお国柄というものに感動いたしました。人間を大事に尊重するという思いの一つの象でありましょう。それに比べて、この世界には何と悲惨な現実が散在していることか。人間の生きられるのはとても短い限られた時間であるのに、この地球は混迷を極め、私達は仕合せな状態とは言えないでしょう……。だから、私は歌を作るのかもしれません。いい加減なヒューマニストでありたくはないですが、人間の自尊と生命と自由を守りながら生きてゆきたいと、常に思っています。
人間は、もっとそしてずっと楽しく生きていいはずです。宇宙に星が生まれるべくして生まれたように、人間も人間らしくあるよう生を受けたはず。その人類もやがては消えてゆくかも知れない、という予感を感じながら、ふっと湧き上がる思いの中で、私は作歌しているように思います。
著者プロフィール
棟 幸子
1926年 樺太豊原市に生まれる
1942年 北海道小樽市に移る
1970年 春より作歌はじめる
1971年 潮音入社 太田青丘先生、絢子先生に師事
1975年 新墾入社 足立敏彦先生、椎名義光先生、飯田哲雄先生の選を受く
1984年 第一歌集「あをき翼」上梓
1992年 第二歌集「青き海」上梓
1998年 第一歌論集「青き玻璃」上梓
2001年 第三歌集「もし雪が青く降るなら」上梓
現 在 潮音、新墾、創北に所属。日本歌人クラブ、北海道歌人会会員
A collection of tanka A blue window (22nd CENTURY ART) (Japanese Edition)
Sobre
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