アメリカはガソリン税の破綻危機をどのように乗り切るのか?
世界一の自動車社会アメリカ。それをささえるインフラ(社会基盤)としてなくてはならないものが, 道路ネットワークです。では, アメリカは, その道路ネットワークを整備する資金をどのように確保しているのでしょうか?
米国の連邦政府レベルにおける道路整備の財源は, 連邦道路信託基金(HTF: Highway Trust Fund)によって賄われています。この基金, つまりHTFは, ガソリン税などの燃料税を主な財源にしています。
そのHTFに関して, 支出が収入を上回る赤字状態が恒常的となり, 2013年以降, 「破綻」の可能性が懸念されるようになりました。
この本は, そうしたHTFの「破綻危機」の問題を対象にしています。
HTFの現況, 役割, 破綻問題の原因を把握し, それらをめぐる利害関係状況を見据え, 破綻危機回避に向けた政策形成のプロセスを明らかにすることがこの本の目的です。
この本の主な構成は次のとおりです。
第1に, HTFやガソリン税の現況と基本的な仕組みを概観し, 既存の研究を踏まえこの本の立ち位置を確認します。
第2に, 米国の主な道路整備法とHTFの関係をつかみます。
第3に, HTFの財源不足問題を考えます。この問題は, 2013年以降に特に表面化してきたものであり, 財源不足による支払い不能(insolvency)の可能性とその原因を探ります。
4番目として, HTFの財源機能に関して, 近年特に懸念されている老朽化するインフラストラクチャーの維持管理の問題を考えます。
第5に, HTFの役割とそれを取り巻く環境の変化をおさえます。それを踏まえて, 支払い不能(破綻)を回避するためにどのような解決策が検討されているのかをみます。
第6として, そのような解決策に対する連邦レベルでの利害関係を掘り下げます。それにもとづき, 現時点でHTFの破綻回避に向けどのような政策が形成されようとしているのかそのプロセスを考察します。特に, 2014年の首都ワシントンの政治模様を検証します。
第7に, HTFの破綻危機を乗り切るために, 2015年12月, オバマ大統領と連邦議会が下した決断を紹介します。それが、「The Fixing America’s Surface Transportation (FAST) Act」、「米国陸上交通修復法」です。ワシントンの関係者の間では、ファスト法(FAST Act)と呼ばれています。
5年の長期法であるファスト法により, HTFの破綻問題は, ガソリン税を据え置いたままで, 連邦準備銀行の資金や一般会計予算の繰入れを活用する手法で解決されました。
しかし, ガソリン税を主要財源とするHTFの基本構造は是正されたわけではありません。見方によっては, ファスト法によって, HTFの破綻問題が5年先送りされたと評価することもできます。
5年後の2020年。5年もあれば, アメリカの政治, 経済, 社会, 技術は劇的に変化する可能性が高いです。アメリカは、ガソリン税を主要財源にするHTFを, 5年後にどのように改革するのか。引き続き, 見守っていく必要があります。
もちろん, アメリカのHTFの破綻危機は, 日本にとっても対岸の火事ではありません。日本も, 人口減少によって課税ベースの縮小に直面しています。したがって, アメリカの対応の仕方から, 日本の道路整備財源の在り方についても重要な示唆を得ることができると思われます。
Amerika-wa-Gasorin-Zei-no-Hatan-Kiki-wo-Donoyou-ni-Norikiru-noka (Japanese Edition)
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