「夏への扉」Andalusian Cats
何気なく流れてきた音楽で、ふと昔を思い出すことは無いだろうか?
あの時代、あの時、いつも周りに流れていた曲の数々、
今、それらに再び触れることで、フラッシュバックのように、
その時代へと心は飛ぶ。まるでタイムマシンの様に。
1980年から、妻と二人で歩き始めたヨーロッパ。
スペインを中心に南はモロッコ、北はノルウェイまで、
時間と資金の続くかぎり、ひたすら歩き続けた。
資金が乏しくなると、日本でがむしゃらに働いた。
あの時代、日々心に触れるもの何もかも新鮮に見えた。
訪れた国の中で、スペイン、特に南部のアンダルシアは特別な土地だった。
それはこの地が、私達にとって、最初の外国であり、
最初の生活の場であったからだ。
時に旅人の目で眺め、時に生活者の目で物事を理解した。
親しい友人も出来た。そして彼ら、彼女達との今世の別れも。
ふり返ってみれば、私達には数々の旅の思い出と、
すり切れたメモ、そしてその時々、記録した写真だけが残った。
それら一枚一枚の写真は、聞き覚えた曲のように、
瞬時にその時代へと心を連れ戻してくれる。
夫婦共々、猫好きであったゆえ、ストックの中には
各地で出会った猫達が数多く記録されている。
確かにヨーロッパという重厚な歴史に比べれば、
その存在はあまりにはかない。
しかし彼らは、その小さなフレームの中で、
今も生き生きとその生を謳歌している。
ロバート・A・ハインラインの小説「夏への扉」に出てくる猫のピートは、
家のドアというドアを試せば、
いつか「夏」へと続く扉に至るのだと確信していた。
私にとっても、これら一枚一枚の写真は、
単なる映像としての記録だけではなく、
まさに、その瞬間へと続く「夏への扉」なのだ。
額に汗して、がむしゃらに生きた人生の「夏」への ——。
Andalusian Cats: The Doors into Summer (Japanese Edition)
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