Bangun Saito Mokichi zen kasyu 18 (Japanese Edition)

斎藤茂吉の『決戦歌集　万軍(ばんぐん)』の電子書籍です。八雲書店の「決戦歌集」シリーズの一冊として、昭和20年(1945)7月、著者自身により選歌・編集された書ですが、敗戦により出版は中止となったため、長く「幻の歌集」とされてきました。

昭和16年の開戦前から、昭和20年の敗戦直前までの歌、200首足らずを収めます。日本の戦果に歓喜し、天皇と皇軍を讃美し、敵国を憎悪罵倒し、一億一心を言挙げし、といった戦争詠が、厳しい緊張に、あるいは激しい気勢に充ちた調べで歌い上げられています。

「緒戦時、学生も学者も各界一流の芸術家もひつくるめて日本人の大多数が、先進国米英に対する軍の戦果の大きさに感動し、進んで戦争協力の姿勢を見せたのは、ごく自然な成行きであつた。茂吉先生はそれの代弁者に近い存在だつた」（阿川弘之「日米戦争と茂吉」）

著者没後、発行者・発行年月など不明の謄写版が世に現れ、また昭和63年には紅書房より柴生田稔の後記を添えた『歌集 萬軍』が出版されましたが、いずれも著者の自筆原稿と食い違う箇所が少なからずあります。本書は「茂吉幻の歌集『萬軍』」（秋葉四郎氏著、岩波書店平成24年刊）に収録された自筆原稿影印を底本として新たに本文を作成しました。

時局の急転さえなければそのまま出版されていたはずの歌集であり、また「歌人斎藤茂吉の戦争を詠った作品の頂点をなすもの」（秋葉氏）との評価もある作品なので、内容の是非はともあれ、茂吉の歌歴の一端として逸せないものとの考えから、「斎藤茂吉全歌集」シリーズの一冊に加えたものです。

漢字は新字体に改めました。
本文はリフロー型の電子テキストですので、語彙検索や文字サイズの拡大縮小、メモ機能・辞書機能などがご利用になれます。