第一章
東日新聞東京本社広告局の三沢広告審査室がひき逃げされ、死亡した。
一方、この事件より前に、広告局が掲載した生命保険特集に、郵政省からクレームがつき、社内では責任を追及しようと、懲罰委員会が開催された。ところで、この生保特集に関与していたのが、広告局広告企画部次長の塩野谷武士で、彼は編集局経済部から左遷されてきたばかりだった。左遷の理由は半年前にさかのぼった。塩野谷は、ある特ダネをものにしようとしていた。それは、流通業界大手の東西百貨店の総会屋利益供与事件だった。取材を終え、確信と証拠を得た塩野谷は、記事掲載に踏み切ろうとしたが、直属の上司である鈴木部次長に止められた。理由は、鬼頭経済部長が、東西百貨店の佐藤社長と昵懇の間柄だったからだ。上司の部長を気づかった斎藤部次長は塩野谷の特ダネを握り潰そうとする。怒った塩野谷は、出勤体制の盲点をついて、部次長と部長を飛び越えて、直接編集局次長の猪股に進言する。猪股は、塩野谷の特ダネを翌日の朝刊に載せ、かつ、社会部内に特別取材チームを編成し、連日報道を続ける。このチームの中心となった塩野谷は、経済部に籍があるため、同部から白い目で見られる。その報道が口火となり、各マスコミの報道も活発となり、ついに総会屋と東西百貨店の首脳陣が逮捕され、事件は終息に向かう。そんな時、東日新聞社では、人事異動があり、社会部によって面子を潰された経済部が社の上層部に働きかけ、人事で見事に巻返しを計る。その流れで、目障りな塩野谷が広告局に飛ばされる。その塩野谷を待ち構えていたのが同期の西端で、彼は塩野谷の筆力を借りて、生保特集の記事広告を掲載する。ところが、この特集は簡易保険の批判記事だったので、郵政省から猛烈なクレームがつく。折りから子会社の東日テレビの地方局の開局を郵政省に申請中だった東日新聞社の三又会長が、物凄い剣幕で立腹し、社内に懲罰委員会を設置し、記事広告掲載までの社内手続き上の責任を追及する。しかし、第一回目の懲罰委員会が開催された日に、社長の上里が脳溢血で倒れて重体となり、その翌日には、三沢広告審査室長がひき逃げにあって、死亡してしまい、社内は大混乱に陥り、第二回目の懲罰委員会は無期延期となってしまう。
第二章
警視庁の烏丸刑事は、東日新聞社の塩野谷から、一時期取材攻勢を受けていたが、最近では全く連絡が途絶えていた。そんな時、東日新聞社の社員をひき逃げした車が盗難車だということがわかり、事故から殺人事件に切り替えられ、烏丸が捜査を担当する。烏丸は旧知の塩野谷の協力を仰ぐ。捜査は害者と人間関係を構築していた者をあたるが、全ての捜査対象者からアリバイが成立し、捜査は暗礁に乗り上げてしまう。そんな中、東日新聞社の専務の林原が病気療養中の上里社長に代わって、社長に内定する。
ところで、害者の三沢は死の直前に「バラ」という言葉を口にしていた。烏丸は当初バラの花と勘違いするが、ふとした偶然からそれが人の名前の一部であることに気付く。それは、広告局担当の林原専務で、烏丸は犯人を林原と睨む。が、彼は事件当日美術展の仕事で、スポンサーであるローズ社の下平専務と付きっきりで、イタリアに行っており、アリバイが成立していた。そんな時、林原が美術展の解説のため、テレビの深夜番組に出演する。それを見た烏丸の家に居候している姪の美華が、グァム島旅行に行く途中で逢った人物と同一だと言う。が、この時、美華のいうことに疑念を持たなかった。
その後、ある窃盗団がつかまり、盗難車を林原に売ったということが判明する。美華が、林原がテレビでは銀淵のメガネをかけていたのに、成田への途中で見かけた時には、鼈甲のメガネをかけていたと言ったことに引っかかった烏丸は、美華が林原を見かけた日は、彼がイタリアに滞在していて、日本にはいなかったと主張する期間であることをつかむ。しかも、ふだんは銀淵のメガネをかけているのに、その日は鼈甲のメガネをかけていたとのこと。鼈甲のメガネはローズ社の下平もかけており、烏丸は、林原が下平の顔に見せかけて、下平のパスポートを使って、いったん帰国し、三沢を殺害して再び出国していたと推理する。殺害の動機は、生保特集の責任を審査室長の三沢に負わせるためだ。
その後、暴走族の車が落ちた港から、それを引き上げる際に、三沢をひき逃げしたと思われる車も見つかり、物的証拠があがる。また、ローズ社の下平は愛人とイタリアを旅行していたので、その口裏合わせのために、林原と行動を共にしておいたことを突き止める。
証拠がそろい、烏丸たちが林原を逮捕した日は、彼が東日新聞社の社長に就任する日だった。
DAINIJYUYONKAIHOKKAIDOBUNGAKUSHOUSAISYUUKOUHO SHINBUNSHASATSUJINJIKEN (Japanese Edition)
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