はじめにより
本書の4人の筆者に共通する意識は、福島県民ではない「私」に何ができるのだろうか、ということです。でも、何ができるのかも通わないとわからない。だからその思いを込めて、私たちは『福島をあるく』というタイトルをつけました。
一度きりのアンケート調査やインタビューではなく、足を何度も運んで、生活の場に近づけるよう、自分ごととしてとらえられるよう、通い続けました。あわせて福島県の住民ではない私たちが、どのように感じたのかも記述しています。
本書は次のような皆さんに特に読んでもらいたいと思っています。福島に足を運びたいけれども、時間に余裕がないので機会を失ってしまった皆さん、福島に行きたいけども放射能が心配で躊躇(ちゅうちょ)している皆さん、原発事故後に放射能に対して関心を持つようになった皆さん、福島は子どもたちに住まわせてはいけないと思っている皆さんに、特にお読みいただきたいと思っています。
本の構成について
この本は4つの章で構成されています。筆者たちが思い入れのある福島の人々の暮らしや仕事の場に通いながら、見聞きしたことを記録していきました。
第1章は、福島県いわき市で国産・杉割り箸をつくる (株)磐城高箸について増山明則さんが書きました。彼はもともと公務員志望の学生でしたが、進路を再考しUターン就職を考えるにいたりました。そのような中で、磐城高箸の高橋正行さんと出会いました。地元の日立市を拠点に就職活動をしながら、学生インターンシップとしてお手伝いをさせていただくことになりました。中国産割り箸との価格差で圧倒的に不利な状況にありながら、地元林業家が仕事としてやり甲斐を感じるような価格で杉間伐材を仕入れるという挑戦をしています。磐城高箸はなぜ国産杉間伐材にこだわるのでしょうか。どのようにして事業を続けていくのでしょうか。磐城高箸の挑戦から学んでいきます。
第2章では、福島県飯舘村(いいたてむら)のかたがたとの交流について的野暁さんが聞き書きしています。的野さんは2012年8月に飯舘村の仮設住宅で棚付けボランティアに行きました。以来、飯舘村に惹かれてしまいました。飯舘村で偶然出会った70歳の女性、避難先の福島市で「いいたて雪っ娘」というかぼちゃを育てる渡邊とみ子さん、飯舘村から山武市に避難し小林牧場を開いた酪農家の小林将男さん、そしてきつつきの会という飯舘村民の自治会での避難している方々との出会いから学んだことを記していきます。
第3章は福島のお母さんたちについてです。三枝悠希さんは、以前に福島でボランティアをさせてもらいました。そのときに「あなたは若いから、東京で子どもを産んで育てて」と、突き放されるように言われたことが強く印象に残りました。それがきっかけとなり、福島で子育てをしているお母さんたちのことが気になりはじめました。お母さんたちは、福島で暮らすことをどのように捉え、考えているのでしょうか。そんなときに出会った福島市内の「チャンネルスクエア」と「みんなの家@ふくしま」。ここは、お母さんと子どもたちの居場所です。彼女は「福島」と、どのように関わっていけばよいのか、葛藤し格闘していきます。
第4章は私(碓井健寛)が、福島県の夜間中学を設置する運動について取り上げました。夜間中学は、これまで戦争や貧困などが理由で学校に行けなかった人々に対する救済措置として存在してきました。しかし世の中に100万人を超える人々が、義務教育を十分に受けることができなかったとみられています。現在、公立の夜間中学は日本の8都府県に31校しかありません。大谷一代さんは福島で運動を始めた動機について「福島のような普通の街に公立の夜間中学ができてにぎわえば、日本全国に夜間中学が広まるのではないか」と語っています。大谷さんたちは公立夜間中学の設置運動と並行して、福島駅前自主夜間中学を開講しています。学びたい人であれば誰でもここで学ぶことができます。なぜ自主夜間中学を運営するのでしょうか。その思いや行動に触れてみたいと思います。
各章はルポルタージュと解説文から構成されています。解説文というのは専門用語や背景をより深く説明するための独立したコラムのことを言います。ルポルタージュの文章から解説文にジャンプできるように、文章中に[1]、[2]という番号が振ってあります。ただし、これらの解説文を参照しながら読む必要はまったくありません。読者の皆さんには必要に応じて、あるいは気が向いたときに、好きなところから読んでいただければと思います。
Fukushimawoaruku (Japanese Edition)
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