私は経営コンサルタントになって30年、日本の産業界と韓国の産業化と両方を同時に見てきました。日本も高度成長期からバブル崩壊、長引く低成長。韓国では「漢江の軌跡」と言われた高度成長、通貨危機による財閥解体、そして最近の低成長まで、この両国をつぶさに見てきたことが今の私の強みになっています。
そこで低成長なのに高度成長のままの構造や仕組みになっている企業がいかに多いかという事にも気づかされました。これでは欠品も長期在庫もたまる一方です。それでいて2乗3乗の売りに追従できそうもありません。それではどうしたら良いのか?これがこの『ギリギリまでつくらない、運ばない、仕入れない』の発想の原点でした。
日本は最近でこそアベノミクスで多少景気が上向いたようですが、日本の景気はバブル崩壊から20年間変わっていません。
しかしこの低成長に加えて、ある商品だけは爆発的に売れて、供給が追い付かないという現象もつい最近までありました。まだ記憶に新しい、プリウスに代表されるハイブリッド、i-phone やGALAXYのスマホなどは数カ月待たされました。
「日本人だからあれだけ待つのだろう」と韓国の人によく言われたのを覚えています。
基本的には世界の人もそんなに待たない。
それなら、欠品の出ないような準備と行動をしていなければならない。
低成長でも、ネット社会になって来ると2倍3倍の売上ではなく、口コミなどで2乗、3乗の売り上げになります。仮にそうなっても待たせるわけにはいきません。
2乗3乗になれば人も車も必要になりますが、人や車に仕事をつけているので、増員増車しても2乗3乗の量を処理する事は出来ないでいます。だから仮に在庫があったとしても供給が出来ないのです。どんなに売れている商品でも物流センターを経由しなければ出荷できない、センターの棚に一旦格納しなければ在庫登録も出来ない。これでは供給がネックになります。
更に輪をかけて、ユニクロに代表されるグローバル企業は世界同時発売をするようになりました。世界各地の物流センターで同様の処理を同時に行うようになると、どこのセンターは出来るがどこのセンターは出来ないなどと比較される事にもなります。
2乗、3乗の売り上げが世界同時に起こったとしても、欠品の出ない供給体制(流通構造、仕組み)が必要になりました。
一方ではネットショッピングなどで返品が当たり前の商習慣として行われているので、企業から見たら返品の山、一旦返品されれば訳あり商品、格落ち商品になります。
それに輪をかけて、あい変わらず消費者の目先を変えるために、毎月新商品の発売ラッシュです。
しかも、キャンペーン、期間限定などの販売手法で一時的に売れるが、その後は一定の売りに戻ります。予測が読めない。
この結果として、企業には長期在庫、返品在庫、販促品や試供品の在庫などがスペースの多くを占めています。
これらの状況を打破するには、『ギリギリまでつくらない、運ばない、仕入れない』と言うキャッチフレーズで流通構造、仕組みを変えていきませんか。つくり過ぎない、運び過ぎない、仕入れ過ぎないからギリギリまで行動しない。
これによって必要なものを必要なタイミングで必要なところに届けられる(JITの思想)。ただ残念ながら市場との連動になりますので平準化は望めません。
サプライヤーはバイヤーに売った段階で売れたとみていますが、消費者が購入したわけではありません。
今、消費者が購入したというリアルな情報で、つくるか、運ぶか、仕入れるかを判断する。
これが低成長かつネット社会での流通構造であり、仕組みではないかと考えています。
しかもできれば3日後までのシュミレーションデータでアクションを起こす。これならつくり始める事も、共同で運ぶことも、船積みの順番を変える事も出来ます。
これが本書籍のサブタイトル「物流の見方を変えれば、事業の味方になる」に通じます。
物流をプッシュスタイルからプルスタイルに180度見方を消費者から見る事で、低成長&ネット社会の事業構造に適合してくるはずです。そのように見方を変える事が、あなたの事業の成長の味方になると確信いたします。
girigirimadeTsukuranaihakobanaishiirenai (Japanese Edition)
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