※ "わたしが居る場所"の改訂版です。
本書冒頭
野原に雨が降っている
細い雨が降っている 降り続いている
果てしなく広い海の上にも 降っている
眼に見えぬほど しずかに降っている
あなたの中にも降っている
わたしを通り抜けて
あなたの胸のキャンバスを濡らしている
細い雨の中を通り抜けて
わたしは もう向こうへ
出て行ってしまっている
ということに 気づきもしないで
まだ 昨日の雨の風景を
まさぐっているわたしが
ここにいる
萩の葉の上を転がる一粒の水に
なっていたりする
えのころ草の穂先に触れる一匹の虫に
なっていたりする……
著者略歴
池谷敦子 (いけたに・あつこ)
一九二九年、静岡県に生まれる。
『ブリキの月』一九九五年、樹海社
『猫のいる場所』一九九六年、樹海社
『ゆめぐろ中継所』一九九七年、思潮社
『象がくる空』一九九八年、花神社
『気がつけば風』二〇〇〇年、花神社
『夜伽』二〇〇二年、花神社
『蝉 降る』二〇〇四年、土曜美術社出版販売
『青く もっと青く』二〇〇七年、青樹社
『眠れぬ夜のあなたに』二〇〇七年、文芸社
『バッタに会う日』二〇〇九年、日本文学館
『ぐらべりま』二〇〇九年、日本文学館
『声のかたち』二〇一一年、美研インターナショナル
『合図』二〇一二年、美研インターナショナル
『朗読詩集 夜明けのサヨナラ(DVD)』二〇一三年、美研インターナショナル
『点字詩集—指先から広がる想像の翼』二〇一四年、美研インターナショナル
二〇一三年、エチエンヌ・ドゥ・コーザン・ギャラリーにて個展、また二〇一五年にはキャラリー・モナリザ(いずれもフランス、パリ)で本詩集の出版記念展を開催。
Goodbye at dawn (22nd CENTURY ART) (Japanese Edition)
Sobre
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