【復刻版の原本】
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クリスティ 矢内原忠雄訳『奉天三十年 上』(岩波新書 1938年11月20日発行)
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【解説】
クリスティは、イギリス・スコットランド出身の医師・キリスト教宣教師で、1883年からおよそ40年近くにわたって、中国東北部(当時の満州)の営口と瀋陽で医療伝道を行ない、民衆の信望を集めました。彼が建てた病院は中国医科大学の一部になっています。この『奉天三十年』は、彼の自伝的回想記です。
赴任当時は、西欧に対する強烈な排外意識が広くありましたし、衛生観念や物の考え方に関する大きなギャップに悩まされています。そして、満州は、日清・日露戦争の舞台ともなりましたし、義和団事変の拳匪の狂乱は満州全土にも及んでいます。そして辛亥革命が起きるなど、世界史的大事件の舞台となりました。またペストの流行も発生しています。クリスティはこれらの大変動下での状況の観察を冷静に行っています。キリスト教布教への反発を背景として勃発した1900年の義和団事変の嵐は、奉天でも吹き荒れました。その悲惨さは、第16章に詳述されています。
このように本書は、当時の中国、満州の実相を直接体験し観察した貴重な記録となっています。以下は、訳者の矢内原忠雄による序文です。
「著者デュガルド・クリステイーはスコットランド人で医者である。彼は一八八三年(明治十六年)伝道医師として奉天に來り、一九一三年(大正十一年)老齢のため故山に帰臥するまで四十年の長きに亘り、滿洲人のために医療及び伝道の生涯をささげた人である。
而して奉天在住三十年に達した時、彼の書き綴りたる經験及び思ひ出を夫人が編輯し、ロンドンにて発行したものが本書である。
クリスティーが始めて来た頃の奉天は、もちろん汽車も無く、海港牛莊から數日の行程を要する『奥地』であった。而して彼は『洋鬼』として嫌悪され迫害されつつも、医術と基督教の愛とを以て滿洲人の友となって働き、遂に司大夫の名を以て滿洲全土に名を馳せ、遠近よりの愛慕を一身にあつむるに至った。日露戦争後奉天にてクリスティーの家に親しく出入した佐藤善雄氏の思ひ出に曰く、「司大夫と云へば奉天省城は云ふも更なり、遠近皆その徳惠に感泣し、全く神様のやうに難有がられて居た。それのみならず支那官場方面からも至大の信任あり、文明知識の生き字引であり、新文化輸入の指導者であり、も一つ國際外交の名譽顧問であって、全く超國際的の信任を博して居たものである」と。斎藤利夫述『満洲生活三十年』序文一三頁)
しかもクリスティーが其の間の個人的經験を語る筆は、平々淡々をとしていささかの自負も衒氣もなく、彼の人となりの謙遜にして憐れみ深きことを知り得て餘りがある。彼の若き同僚ドクトル・ジャックソンは、肺ペスト防疫に從事中殉職した。それを叙する彼の文章を訳出するに当り、推敲の度毎に私は涙せざることがなかった。併しクリスティーがジャックソンのために述べた賞揚の言は、おそらくこれを数倍してクリスチー自身のために與へらるべきものであらう。ジャックソンは奉天に着任して僅々十週間にして殉職の死を遂げた。クリスチーは四十年の長き間、その労働を此処に続けた。彼は死を以て、これは生を以て、有爲の一生を満洲人のために與へたのである。かくて本書は一の貴重なる人間記録である。
本書に取扱へる三十年間の政治的出來事には、日清戦争あり、拳匪事変あり、日露戦争あり、民國革命あり、社会的事変としては一八八八年(明治二十一年)の大洪水あり、一九○○年の基督教徒大迫害あり、一九一一年(明治四十四年)の肺ペスト流行がある。之等の政治的及び社会的事変を含む満洲の歴史の側面観として、本書はまた興味津々たる歴史的記録である。殊に日清日露両戦争を通じて滿洲と深き関係を有つに至りし我が國民に取りては、ただ興味津々といふを以ては濟まされざる重大なる暗示を豐かに含んでいる。
私が本書を課したのは、岩波茂雄氏の懲憩によった。氏は本書を讃んでクリスティーの無私純愛なる奉仕的生涯に感激し、今や滿洲及び滿洲人に對し從來よりも遙かに大なる責任を取るに至りし我が國民に本書を提供し、以て滿洲をして眞に王道樂土たらしむるに資せしめようと欲せられたのである。而して私が敢て不慣れの翻訳を試みることを承諾したのは、滿洲及び支那問題に就いて関心を有つ一人の學徒として、滿洲及び支那傳道に對して興味を有つ一人の基督者として、並に私の父は医師であったし、私の弟は現に同仁会医院の医師として長く支那青島で働いて居るといふ個人的關係によったのである。(以下略)」
※本書の興味深い内容の一端は、『電羊齋雑記』という清朝史に詳しい方のブログ(http://talkiyanhoninjai.net/)での書評で紹介されていますので、お薦めです。
Houtennsanjyunen (KyorinsyaBunko) (Japanese Edition)
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