東日本大震災の被災地に幾度も足を運び、その惨状を見てきた著者の被災者への鎮魂を込めたコラム集。3月にアマゾン・キンドルから電子書籍として出版した「現代の風景~3・11前後の日本社会(上)」の後編。復興に取り組む多くの人たちと出会った著者が、大震災に対する思いを静かな筆致で描いている。第1章と第2章は大震災関係、第3章では被災地以外でひた向きに「草の根」的存在で生きる人たちの姿を紹介している。
空を見上げるのが好きな著者は、最近は空を見つめながら故郷の復興を願う毎日だという。そんな思いが「ふるさとの空へ」という題名になった。
以下はコラムの一部の紹介。
―巨大地震と大津波、さらに原発事故によって平穏な生活を奪われた東北地方の岩手、宮城、福島3県には「苦境」にあって範となる生き方をした先人がいた。宮沢賢治(岩手県花巻市生まれ)、井上ひさし(山形県川西町生まれで仙台市育ち)、野口英世(福島県猪苗代町生まれ)の3人だ。彼らに共通するのは忍耐力と粘り強さを持ち、努力家だったことだ。それは東北の人々の資質でもある。生きた時代は異なるが、3人の生き方は大災害で苦しむ人たちの支えになると信じたい。3人が仮に生きていたら、今度の大災害をどのように語るのだろうか。宮沢賢治は静かな声で「マケルナ、マケルナ」と言い続け、井上ひさしは「笑顔とユーモアを取り戻して…」と呼び掛け、野口英世は「大丈夫だ。粘れ、粘れ」と被災地にエールを送るかもしれない。(東北が生んだ巨人たちより)
―「日本は世界一安全な国だったが、いまは世界一危ない国に近づいている。効率一辺倒で走ってきた後遺症だ」。2007年11月。福島県飯舘村の菅野典雄村長は、村で開かれたイベントでこうあいさつした。それから3年半後、それが現実になった。巨大地震と大津波後に起きた東電福島第一原発の事故によって村は危険地帯へと追いやられ、日本も「世界一危ない国」へと転落してしまったのだ。「までい」(手間ひまを惜しまない、丁寧に、心を込めて、じっくり―などの意味)という方言が使われる村に平穏な暮らしが戻る日は、いつのことになるのか。(までいな飯舘襲った悲劇より)
―東日本大震災を契機に、何かが変わった。人々から笑顔が消え、寡黙になった。多くの被災者が避難所で暮らし、東京電力福島第一原子力発電所周辺の人たちは放射性物質の拡大におびえる日々を送っている。しかし「閉塞社会」といわれる日本社会に、さらに追い打ちをかけた大災害に屈してはなるまい。復興への希望を持ちたいと思う。日本の作家にも大きな影響を与えた19世紀のロシアの作家、イワン・ツルゲーネフの有名な言葉がある。「疲れた人は、しばし路傍の草に腰を下ろして、道行く人を眺めるがよい。人は決してそう遠くへは行くまい」。不自由な避難所生活をしている被災者は本当に疲れているだろう。日本国民の多くもそうかもしれない。ツルゲーネフは、そうした現代の私たちに「焦らず、無理はしないで」と呼び掛けているように思うのだ。(疲れた人は路傍で休めより)
―長い人生では様々な事象に出会い、驚くことも少なくなる。感性や感受性が次第に鈍くなるからだろうか。そうしたことを意識していた矢先の東日本大震災だった。テレビの映像や新聞、雑誌、インターネットの写真を見て震えるほどの衝撃を受けた。その衝撃度は現地に入ってさらに増した。震災から少しだけ時間が過ぎ、被災地ではがれきの撤去が始まり、街の復興を目指して動き出していた。日本人に突き付けられた大災害の痛みを感じながら、岩手県の被災地を歩いた。(被災地を歩くより)
―原発事故がいまだ収束しない福島を旅した。桜前線は既に県北部まで到達していたから、住民たちが避難した地域の桜もひっそりと咲いたはずだ。今回の旅は福島の2つの花の名所を訪ねるのが目的だった。日本三大桜といわれる三春町の「三春滝桜」と、写真家の故秋山庄太郎が「福島に桃源郷あり」と称えた福島市の「花見山公園」である。そこには多くの人が詰めかけていた。やはり、人は花に心の安らぎを求めるのだろうか。(福島の花見より)
著者紹介 1945年福島県生まれ。元共同通信社記者。社会部で警視庁や厚生省(現在の厚生労働省)を担当。3億円事件、ロッキード事件、リクルート事件という歴史的事件と中国残留孤児問題、丸山ワクチン認可問題など厚生行政を取材した。社会部記者の後編集局ニュースセンター副センター長、札幌支社長、メディア局長などを経て2005年8月、共同通信社を退社。2006年12月から2013年6月まで公益財団法人日本財団アドバイザーとして日本各地のNPO法人、社会福祉法人、ボランティア団体を取材した。この間、さまざまなメディアにコラムを執筆している。
著書
「コスモスの詩 松花江にときは流れて」(みずち書房)
「小径を行く―世相独断」(Obunest)
「現代の風景―3・11前後の日本社会」(Obunest)
「現代の風景―3・11前後の日本社会(上))アマゾン・キンドル電子書籍)
「輝く瞳に会いに行こう~ラオス、トルコそして~」(アマゾン・キンドル電子書籍)
「わたしはハナ~あるゴールデンレトリーバーの物語」(アマゾン・キンドル電子書籍)
hurusatonosorae (Japanese Edition)
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