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    insutantorabu (Japanese Edition)

    Por sae souta

    Sobre

     第1話    おでんなカップル
                                   


     ヒロミ。
    親が私にくれた名前。
    男でも、女でもどっちでも通用しそう。ヒデミ、ミチル、マコトといった類。
     だから、と言うわけでもないが、どこか中性的な顔立ち、だと思う。黒髪は肩くらいまであり、肌は白く、眼は切れ長で、鼻筋もきちんと通ってるほうだ、おそらく。高校時代の身体測定ではローレル指数の数値が百を切ってて、その頃とほとんど体形は変わってないから、けっこう痩せてる部類に入るかもしれない。自分で言うのもなんだけど、どっちにも都合良く転がれるような部分が、顔だけじゃなく性格にも現れてる気がする。
    だがそんなのは大した問題じゃない。顔立ちも性格も、男みたいな女もいれば、その反対もいる。問題なのは心と体。それがワンセットじゃなきゃいけないのに。それを男の体と女の心、またはその逆というのは、神様の悪戯か、そうでなければ気まぐれな神様としか言いようがない。
     でも、まあ、いっかあ。こんな人生でも、トキメキくらいある。何回もある。何十回だって―――――。
    その恋がなかなか叶わないぶん、おそらく人の何倍もトキメイてる。そして、ほんの希にだが、本当に恋が実ることがあるの。トキメキが恋に変わるっとでも言うのかな。
    トキメキという形のない、どこから降ってきたのかも分からない一粒の種が、芽を出し、すくすく育って大きな木となり、やがて恋という形はないけど、大切な大切な甘い実を結ぶの。とーっても甘い甘い恋の実。まっ、ここだけの話。ほろ苦いこともしばしばなんだけどさっ。
    と考えると、始終トキメいてるか、恋をしてるって事になるわね。
    今はどっちかって?さあ、どっちだろ。


     第2話    キスマークな関係  
                                   


     「これどれくらい持つだろう?」
     「うーん。五日。頑張って一週間くらい」
     「やっぱり消えちゃうよね」
     首筋からほんのちょっとだけ胸に下りたあたりに、特大の痣を作った二人。それは毒々しいくらいに真っ赤に腫れ上がり、血がほんのり滲み出ている。
     愛の証。変わらぬ愛の誓い。あなたは私のものであり、私はあなたのものであるという切ないまでの男女の愛の絆。二人の間でそれは、細やかながらも仰々しい清貧の誓いだった。
     ビルや道路にしんしんと降り積もる雪が、札幌の中心部に程近いマンションの一室の窓を通して、幻想的な光景を二人に投げかけている。
    エアコンのよく効いた広いワンルームの角っこに置かれたゴミ箱。丸められたティッシュの山とその合間から覗いたいくつもの薄いピンク色の避妊具。その横には遅めのクリスマスを祝った蝋燭やプレゼントの包みが綺麗に畳まれて置かれている。乱れたベッドと二人のぼさぼさの髪。それにキスマーク。


     第3話   嫁はまだか
                                 


     東京駅の新幹線ホーム。
     もう三十歳にもなるというのに母のお見送り付とはいささか気が引ける。階段を勢いよく駆け上がってきたところまではいいが、その別れ際の挨拶に僕たちはなんていったらいいのかわからず、どちらともなく手を差し出すと握手を交わした。そのときなにを思ったのか、母が僕の胸ポケットに一万円札をひょいと突っこんだ。
    なんとか朝一番のやつに間に合い、窓際の席に腰を下ろすと、心配げに見送る母を伏目がちに、こんなときお涙ちょうだいの演歌でも流れればムードが出ていいのになあなんて思いながら、とりあえず作り笑いで手をふった。
     「ああ、もう参ったな……」
    ぶつくさいいながら車窓の風景にしばし目をやる。
     持ってる荷物は下着に洗面具をいれたリュックひとつ。たったそれだけ。だからとても軽い。急ごしらえとはいっても、もうちょっとなにか詰めてもよかったと思う。これじゃあ、近くの友達の家にでも泊まりにいくようなかんじだ。しかしこれからのことを思うと、この荷物でもなんだか重たい。
    たしかに旅に出るるんだけど、その目的というのがあまりにも馬鹿げてる。ほとんどドラマの世界。といえば聞こえはいいが、そうでも思って自分を奮い立たせないとやってらんないね。なんせその目的というのが、嫁探しなんだ。


    第4話  ふたりの東京


    読んでのお楽しみです。



    第5話    インスタントラブ
                                     



    表参道の通りから入って三本目の角を曲がった路地裏に、僕とユリが住んでいる木造二階建て、築四十年の1Kのアパートはあるんだ。いちおうは台所も便所も風呂も付いているが、狭いことボロいことカビ臭いことこの上ない。けれども地下鉄表参道の駅まで歩いて五分、走れば二分の距離は、それで家賃九万円が高いか安いかは別にして、僕の仕事柄とても便利だ。防犯上好ましくない一階部分で、しかも北向きだが、田舎者の僕にとって、東京都港区あるいは渋谷区のだれもが知っているような街を名刺に刷るのがちょっとした夢だったから、それくらいの犠牲はどうってことない。
    目下の問題は痴話喧嘩。そしていつもたどり着くのは下世話にいう「別れる別れない」だ。ときどきこうやって勃発しては無駄な時間を費やし、互いに神経を磨り減らす。
     「出て行けよ」
     「そうする。じゃあ、荷物全部あとで送って」
     「そんなの面倒くせーよ。自分でなんとかしろよ。ていうか近いんだから少しは持って帰れば」
     もともとユリは、偶然にもここから地下鉄で一本、歩きを入れても二十分もあれば帰れる代々木上原に住んでいた。ここよりずっと広くて綺麗でお洒落なワンルームのマンション。十階建ての最上階で日当たりもよく、オートロックに床暖房まで付いていた。こっちに来ればと誘ってくれたが、少しでも便利なところがいいと僕はそれを断った。ならばと、ユリが僕のところに海外旅行用の大きなスーツケースを転がしてやってきたのだ。それにその翌日に届いた大きなダンボール五箱分の、ユリの部屋の半分ちかくにあたるプーさんやミッキーマウスのぬいぐるみ。
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