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    Jesus and his Disciples Part2 Middle volume Act1 (Japanese Edition)

    Por Koujun Kobayashi

    Sobre

     現代の人口の3分の1に相当する20億人以上の信者を擁する世界一の巨大組織・キリスト教は「絶対的リーダーだったイエスが十字架で処刑される」という衝撃的な出来事をきっかけに始まった。しかもそれを始めたイエスの弟子たちは、当時の社会において何の力も持っていない人々だった……。
     なぜ何の力もなかったイエスの弟子たちが、過酷な迫害に耐え抜いて教えを広めることができたのか?
     一時は消滅寸前だったイエスの教団が、なぜ次々と外の世界に拡張していくようになったのか?

     現代のキリスト教が「世界一の宗教」であることは世界中の誰もが認める事実だと思いますが、不思議なことに一般の人だけでなく教会関係者の方でさえ「イエスの死後に弟子たちが教えを広め、キリスト教が世界宗教になる基盤を作ったこと」がごく当たり前の話として認識されている感じがします。
     ただ、聖書に書かれた記述を元に当時の状況を冷静に考えた場合、絶対的リーダーだったイエスに頼り切っていた弟子たちにとってイエスの処刑による衝撃と失望は計り知れないものがあったと思うので、そのショックで彼らは散り散りになり、教団は消滅して終わるのが普通の流れだと思います。
     ところが、弟子たちはその後結束してイエスの教えを各地に広める行動を起こし、やがて教団はローマ帝国の隅々にまで広がって国教となり、徐々に世界各地に浸透していって最終的に「全世界に数十億の信者を持つ世界一の宗教」になってしまいます。このことは私たちが認識している世界史の中では「史上最大の大逆転劇」ではないかと思います。
     なぜイエスと比べて何の力もなかった弟子たちが結束し、過酷な迫害に耐え抜いて教えを広めることができたのか。そして、なぜ一時は消滅寸前だったイエスの教団が勢力を蓄えて外の世界に拡張していくようになったのか。この『イエスと弟子たち第二部』ではそうした過程を描いていきたいと思っています。

     ローマ帝国の支配下にあったイスラエルの地で独自の教えを説いたイエスは、民衆を扇動する危険人物として告発されて十字架上で命を落とす。絶対的リーダーだったイエスを失って分裂寸前だった弟子たちは、生前の師の思いに触れて再起への道を歩もうとする。ペテロを指導者として誕生したイエスの教団は磐石な組織体制を築いてエルサレムに定着した後、ステファノの殉教を契機にイスラエルの外にも進出するようになる。教団を迫害していたサウロがダマスコで回心しただけでなく、北方のタルソスやアンティオキアにまで勢力を拡張していく。
     エルサレムでは、ローマ皇帝カリグラの皇帝崇拝要求の阻止に成功したユダヤ人が排他的民族意識を高めるが、それがユダヤ人だけでなく「異邦人」にも救いの門戸を開こうとするイエスの教団の方針と衝突する。
     異邦人問題はエルサレム教会の存亡に直結する問題となり、異邦人伝道を推進するアンティオキア教会との対立が激化する。エルサレム会議で承認された異邦人伝道が覆されたことに反発したパウロは、地中海世界全域を射程に収めた大伝道旅行を開始して次々と独自の教会を建設し、それによってイエスの教団は「キリスト教」として飛躍的な拡張を遂げることになる。

    『イエスと弟子たち第二部完全版』シリーズ構成
    上巻1「第一章 復活」「第二章 始動」
    上巻2「第三章 殉教」「第四章 回心」
    上巻3「第五章 離脱」「第六章 懇願」
    中巻1「第七章 会議」
    中巻2「第八章 弁明」
    中巻3「第九章 逆十字架」
    下巻1「第十章 開戦」前半
    下巻2「第十章 開戦」後半
    下巻3「第十一章 炎上」
    下巻4「第十二章 イエスとペテロ」

    中巻1 パウロの活躍でアンティオキア教会は飛躍的な発展を遂げるが、異邦人問題を巡ってエルサレム教会との対立が激化し、問題解決のためにペテロ、ヨハネ、パウロが一堂に会したエルサレム会議が開催される。一度は承認された異邦人伝道が覆されたことに反発したパウロは独自の活動を行う決意を固め、シラスと共に地中海世界全域を射程に収めた大伝道旅行を開始する。

     翌朝、バルナバは教会に出向いたパウロが晴れやかな表情を浮かべていることに気づいた。
    「どうやら啓示が下ったようじゃな」
     バルナバが問いかけると、パウロはうなずいた。
    「私も待ちくたびれていましたからね。やっとこの日が来たか、という気持ちですよ」
     彼はこの日の会議で「この機会にエルサレム教会の信者と話し合って異邦人問題に決着をつけたい。そのために自分をエルサレムに派遣して欲しい」という提案をした。彼の提案に皆がうなずき、全員一致でパウロのエルサレム派遣が決まった。
     その頃、エルサレム教会でも中枢メンバーによる会議が行われていた。立って意見を言っていた使徒ヨハネが突然何かに驚いたような表情を見せ、一時発言が途切れた。彼はすぐに我に返って話を続けたので、会議は何事もなかったように進んだ。
     発言を終えて座り直したヨハネに対し、隣にいたシラスが小声で尋ねた。
    「何かあったのか、ヨハネ」
     ヨハネは嬉しそうな表情で言った。
    「来ますね、あの男が……。エルサレムに」
    「え? あの男って、誰のことだ?」
     同じ頃、カペナウムの拠点の家にいたペテロは、妻のハンナとマリアの弟アサフと話をしていた。アサフの問いかけに答えていたペテロが突然話をやめ、ぼんやり空中を眺めるような仕草を見せた。それを見たアサフが驚いて尋ねた。
    「ど、どうしたんですか、ペテロさん?」
    「……あ、いや、何でもない。話の途中にすまない」
     すぐ意識を取り戻したペテロが答えると、ハンナがその様子を察した。
    「聖霊からの啓示? どんな内容だったの」
    「それが、どうやらエルサレムに行っていいという許可が下りたようだ」
     アサフが二人の会話についていけずに戸惑っている中、ハンナはさらに夫に尋ねた。
    「何かエルサレムで大事な用でもあるのかしらね」
     ペテロは真剣な表情で答えた。
    「ああ、久しぶりにあの男がエルサレムに来るようだ」  ~「第七章 会議」より

    ※完全版には廉価版にない「注と解説」を収録しています。
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