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    Jesus and his Disciples Part2 Middle volume Act3 (Japanese Edition)

    Por Koujun Kobayashi

    Sobre

     ローマ帝国の支配下にあったイスラエルの地で独自の教えを説いたイエスは、民衆を扇動する危険人物として告発されて十字架上で命を落とす。絶対的リーダーだったイエスを失って分裂寸前だった弟子たちは、生前の師の思いに触れて再起への道を歩もうとする。ペテロを指導者として誕生したイエスの教団は磐石な組織体制を築いてエルサレムに定着した後、ステファノの殉教を契機にイスラエルの外にも進出するようになる。教団を迫害していたサウロがダマスコで回心しただけでなく、北方のタルソスやアンティオキアにまで勢力を拡張していく。
     エルサレムでは、ローマ皇帝カリグラの皇帝崇拝要求の阻止に成功したユダヤ人が排他的民族意識を高めるが、それがユダヤ人だけでなく「異邦人」にも救いの門戸を開こうとするイエスの教団の方針と衝突する。
     異邦人問題はエルサレム教会の存亡に直結する問題となり、異邦人伝道を推進するアンティオキア教会との対立が激化する。エルサレム会議で承認された異邦人伝道が覆されたことに反発したパウロは、地中海世界全域を射程に収めた大伝道旅行を開始して次々と独自の教会を建設し、それによってイエスの教団は「キリスト教」として飛躍的な拡張を遂げることになる。

    『イエスと弟子たち第二部完全版』シリーズ構成
    上巻1「第一章 復活」「第二章 始動」
    上巻2「第三章 殉教」「第四章 回心」
    上巻3「第五章 離脱」「第六章 懇願」
    中巻1「第七章 会議」
    中巻2「第八章 弁明」
    中巻3「第九章 逆十字架」
    下巻1「第十章 開戦」前半
    下巻2「第十章 開戦」後半
    下巻3「第十一章 炎上」
    下巻4「第十二章 イエスとペテロ」

    中巻3 パウロの動きに呼応する形でヨハネは小アジアのエフェソへ、そしてペテロは世界の中心地であるローマへと赴く。ローマではネロ帝が寛容の政治を掲げて帝国秩序の維持と市民生活向上のための善政を行っていたが、セネカの引退とローマの大火をきっかけに「暴君」への道を歩み始めるようになる。皇妃ポッパエアはネロに対する汚名をそそぐためキリスト教徒に放火犯の罪を着せようとし、逮捕されたペテロは自ら逆十字架にかかることを望む。

    「ローマの大火の知らせを聞いて首都に戻った時、炎が首都を荒れ狂っている様子が予の目に飛び込んできた。その時予は、ローマ全体が炎に包まれて跡形もなく消え去ってしまうのではないか、という恐怖に駆られた。もし、予の治世で多くの先達が積み重ねてきた数々の努力が灰燼に帰してしまったら、一体どう申し開きをすればいいのか……。
     そう思った時、この現実から絶対に逃げてはいけないと思った。被災者のため、そしてローマ市民のため、予に出来る限りの精いっぱいのことを必死でやってきたつもりだ。そして、そうした様々な施策は市民たちも満足してくれると思っていた。黄金宮殿の建設にしても、その中の人工湖や自然公園は市民たちにも全面的に開放するのだから、市民たちはきっと『狭苦しくて乱雑な都市の中にホッとする憩いの場ができた。これでようやく人間らしい生活が送れる』と喜んでくれるだろう、と思っていた。しかし、そうではなかった……」
     ネロの話を、ポッパエアは黙って聞いていた。ネロはさらに語り続けた。
    「これだけ民衆のために努力しても、そうした努力は民衆に伝わることがない。そればかりか、何か悪い噂があるとすぐにそうしたものに飛びついて予に疑念を持つようになる。これでは、今後どんなに民衆のためにと思って努力しても、何一つ報われることなく終わるしかない。
     やはり、皇帝というのは永遠に民衆にこき使われるだけの奴隷なのだろうか? だとしたら母上は、最初から予に恨みを持っていて、予を永遠に民衆の奴隷として苦しませる人生を送らせようと企んでいたに違いない……」
     ネロはここで言葉を切った。ポッパエアがなおも黙っていると、ネロはその様子に気づいて表情を改めた。やがて、自分の至らなさを恥じるような口調でつぶやいた。
    「……すまなかった。人の上に立つ人間らしくない泣き言を言ってしまったな。こんなことではあなたに『実力ある人間こそが皇帝にふさわしいのです。この程度のことで女々しく泣きわめいてどうしますか!』と叱咤されそうだな……」
     懸命に平静を装おうとするネロの姿に、ポッパエアは覚悟を決めた。一呼吸して気持ちを落ち着かせた後、ようやく口を開いた。
    「陛下、そうした陛下の孤独とお苦しみを共有できないことを、私はとても残念に思います。ただ、巷間に流布する『あの大火はネロが命令したのだ』という無責任な噂だけでも何とかすれば、多少なりとも陛下のお苦しみも軽減されるのではないかと存じます。そのことについては私どもにお任せいただけますでしょうか」
     ネロは意外そうな顔でポッパエアを見た。
    「……どうするのだ?」
    「大火を起こした真犯人を逮捕し、民衆の前に引き立てて罪を詫びさせるのです。そうすれば民衆も納得し、陛下が被災者対策やローマの再建のために死にもの狂いでご努力されたことを認めるようになるでしょう」
     これを聞いたネロの目にかすかな光が戻ってきた。
    「大火を起こした犯人が……。それは一体、どんな連中なのだ?」
    「……今ティゲリヌスが捜査していますが、逮捕は時間の問題と思います。陛下にはその連中が逮捕された際、彼らに与える罪名の許可をいただきとうございます」
    「罪名?」
    「はい。彼らに与えるべき罪名は、〝人類全体への憎悪の罪〟です」  ~「第九章 逆十字架」より

    ※完全版には廉価版にない「注と解説」を収録しています。
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