ある画家の専属絵画モデルだった10年間を書いた、体験告白小説です。
彼と出会ったのは、私がまだ東京に来たばかりの頃。投稿小説が次々と採用され、新人女流作家として夢に燃えていた時です。
彼(仮名)と私は、出版パーティーで、新人作家と挿絵画家として知り合いました。
たまたま、彼が私の連載小説の挿絵を描いてくれていた縁で親しく言葉を交わしたんですが、その時の第一印象は、なんてシャイな方!…です。
その時彼は50代後半、私は30代。彼は女性と接するのが苦手な様子で、もじもじと言葉少なく、なんとも恥ずかしそうに喋るのです。
その彼があるパーティーで、
「困ったなあ…」
いかにも弱った様子で席について、
「僕、今度連盟で出すカレンダーの、6月の絵を担当していて、会長からはやく出すようにと今言われたんですけれど、僕、モデルさんがいないと描けなくって…」
と私に打ち明けました。
困ったな、を連発していた彼は、
「僕を助けると思って、モデルになってくれませんか?」
と私に向き直って思いきったように告げたのです。
「えーっ、私でいんですか? 本当に」
モデルなんて超美人じゃないとなれないと思っていた私は、困惑したのですが、彼の熱心な懇願に負けて引き受けました。
初めて訪れた彼の住居兼アトリエは、東京都心から少しはなれた、静かな山の中腹にある古びた洋館でした…。
最初にグループ展に出した絵は、いやらしい絵と酷評されます。
私たちは、色んな美術館めぐりをして研究し、今度こそすばらしい絵を! みんながあっと言うような美しくて女らしい絵を、と作戦を練って週に二回アトリエに通い、絵を製作して発表したのです。
それから次々と起こる、信じられないようなドラマチックな出来事。
絵が絶賛され、表紙に採用されたり、グループ展で絵が売れたり、水彩画家だった彼は、私のすすめで油絵にもとりくみました。
それはいい方の出来事ですが、いつしかやさしかった彼は嫉妬に狂って変貌し、夜中にマンションのドアを叩いたり、私の服を隠して閉じ込めたり…。
自由奔放に生きたい私と束縛しようとする彼。
「お前を描けなくなったら、俺の人生は終わりだ。だからモデルであるお前は、俺自身より大事な存在なんだよ」
彼の執着は、はたして愛だったのでしょうか?
もちろん、アトリエの中での楽しい思いでもたくさんあります。
女流作家でもあるモデル自身が書いた、アトリエの中での出来事を赤裸々に綴った日本初の美術小説。
いかにしてポーズを決めるか、デッサンから下塗りと入っていく絵の製作過程。
「これこそが洋子の肌色だ!」
半年間探しぬいて、油絵でやっとたどりついた究極の肌色とは。
エピソードや恋愛模様満載の、はらはらする小説です。
本の中に、実際に描いてもらった美しい絵もたくさん載せています。
☆著者紹介
藤 まち子
作家 東京在住
報知新聞社 文芸小説賞受賞
投稿からプロ作家に。
恋愛小説、ミステリーなど、著作多数
kaigamoderunokokuhakuatorienonakade (Japanese Edition)
Sobre
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