<まえがき>より
この記録は、僕が賢人諸島へ出向き、そこに住んでいる賢人たちから聞き取った知識をまとめたものである。賢人たちの答えてくれた一言を、記憶して書きこんだメモをもとに、僕の考察を述べている。記録自体は、メモと考察の繰り返しで構成されていると考えてほしい。
賢人たちは僕に全てを教えてくれるわけではなかった。僕の質問に答えてくれるだけだ。だからこそ、多くの知識を得るために、僕の個人的な問題について答えるような、狭い質問の仕方をさけた。僕が賢人たちに向けて用意した質問はこうだ。
「今の僕を見て、ひらめく教訓をお答えください」
いくつもの教えを賢人たちから聞き出したが、それを自らの血肉にすることは僕にしかできない。考察はそのために行われたと思ってもらいたい。
なお、島内調査を行う際に、僕は賢人たちの思想にしぼって調査を繰り返しており、島の実態には触れていない。これから以後の調査についても同様だ。しかし、賢人たちにはある特徴が確認できた。
その特徴とは、賢人諸島に存在している賢人たちは皆、「質問され続けている」ということだ。それとは逆に、質問されなくなった賢人は、いつの間にか居なくなっているらしい。
詳しくは分からないが、ここで一つの解釈が可能になる。「質問が続く」ということは、賢人の答えが有用であった証拠であり、現在までそこにいるということは、有用であり続けた証拠なのだ。
そういう事情から、賢人たちがどれほどの高齢であるか、僕には計り知れない。中には、3千年以上も生きているという賢人もいて、真偽については確かめようがなかった。
ところで、この調査記録を公開するにあたって、読むべきでない人を二通り述べておきたい。僕が禁止することではないが、注意が必要だと思っている。
まず、「賢人諸島に行ったことがない人」は僕の記録を読んでいる場合ではない。何よりも先に、賢人諸島へと訪れるべきだ。
賢人諸島の所在地が分からない人は、ネットで検索して確認してほしい。検索ワードは、あなたの望むこと、解決したいことに、「名著」というワードを組み合わせれば良い。きっと、親切な人たちが、賢人諸島の所在地を知らせてくれるはずだ。
次に、「あらゆる賢人の知恵を知っている人」も読むべきではない。というか、自己啓発の文章自体、もう読む必要がないはずだ。仮に読んだとしても、自己優越の批判につながるだけだろう。誰のためにもならないばかりか、読む意味も得ることもなく、時間の無駄だ。深みのある理解を目指すためには、少なくとも自らの無知を知ることが必要だ。
では、どんな人に有用と言えるだろうか。それには、僕は「探求心のある人すべてだ」と答えたい。
しかし、賢人たちに話を聞くときに、自分が何を考えていいのか、分からなくなることもしばしばであった。その場合の、一つヒントになるようなことを示しておく。雑談をしながら賢人から聞き出すことに成功したので、参考にしてもらいたい。それは、賢人諸島の理念についてだ。以下は賢人が答えたものである。
「理念と言えるかどうかわからないが、我々には明確な共通認識が一つある。
諸悪の根源は、『考えない』ということだ。
考えないということは、『想像力を働かせない』ということ。
想像力を働かせないということは、『予見ができない』ということ。
予見ができないということは、『変化を恐怖する』ということ。
変化を恐怖するということは、変化そのものである『人生を否定する』ということ。
人生を否定する者は、生きることも死ぬことも、喜びも悲しみも否定する。
また、身近な他者の不幸を願い、ゆえに己にも幸せが訪れない。」
神様は、僕らの問題解決のために、三つの方法を授けてくれた。ひとつは、「忘れる」こと。もうひとつは、「慣れる」こと。最後に「学ぶ」こと。はじめの二つの方法を手にしている人は、賢人に興味を持っても仕方のないことだろう。僕の考察にしても同様だ。
最後に僕の考察についても、捉え方を述べておく。もちろんのこと、僕が正解を述べているわけではない。これを読んでくれる人にとっての最善など、本人以外に分かりようもないことだ。よって、僕の考察は、あなたが賢人の教えについて、考え始めるためのヒントであり、きっかけだと思ってもらいたい。
僕から言えることは以上である。楽しんで読んでもらえることを願っている。
<目次>
まえがき
精神島
革新島
商売島
先見島
組織島
哲学島
交流島
あとがき
kenjinsyotou: daiikkaitounaityousanokiroku (Japanese Edition)
Sobre
Baixar eBook Link atualizado em 2017Talvez você seja redirecionado para outro site