Kumaji (Japanese Edition)

　警察署内の汚職を内部告発したことで自らの職を辞することとなった元警察官の冬馬は、高校教師の妻、栞(しおり)と一緒に二人で暮らしている。かつては不妊治療まで受けながら、子作りに励んでいた二人だったが、冬馬の失職以来、治療は頓挫し、二人の間の情熱もしぼみ掛けていた。
　そんな二人の間に、ある日、縫いぐるみのクマジが割って入って来る。クマジは、冬馬の話相手となり、彼の不安や苛立ちを癒す存在となるが、栞にとって、クマジは、夫、冬馬の心の傷を象徴する存在でしかなかった。彼女は、夫とクマジの交流を、ただ痛々しい思いで見詰める。
　二人の間に、クマジを介入させることで、何とか危うい均衡を保ってきた夫婦関係にも、やがて変化が訪れようとしていた。