五年振りにドイツから帰国した宇都宮英久は、東京の余りの変化の激しさに驚いた。
それは、まるで古いものは総て破壊してやると言ったような変化であった。
経済優先による効率性追求の陰で、少子高齢化による後継者不足の問題が現れ、更には、日本古来の良さの源である文化・伝統及び美徳は失われ、巷には無節操で自分勝手な言動だけが溢れていた。
この乾ききった社会で、人は常にやり場のない不平や不満を抱え、何の理由も無くそれを弱者にぶつけるという悲惨な事件が多発している現状に、
「一体日本はどうしてしまったのか」
物欲、経済優先の社会では、
「金はいくらあっても満足を買う事は出来ない」
大切な事は、「物欲」ではなく、「心の満足」である。
この殺伐とした、無機質的社会を立て直すには、
「やはり教育しかない」
然し、現存の教育は、人権、平等、自由などの耳当たりの良い言葉だけを売り物にする、戦後のアメリカによる押し付けられた民主教育であった。
そしてそれは、日本の伝統的良さを根本から否定した「非自立国家」を目的としたアメリカの政策の結果であった。
「これでは、将来、日本は世界の中で埋没してしまう」
過去は必ずしも悪ではない。連綿と続く文化・伝統には、それなりの意味があり、良さがある。
「伝統は、限りある人間にとっては永遠の存在である」
二十一世紀の日本のあるべき教育を追求する目的において、江戸時代から続く和菓子店『山の井』の経営の危機や、宇都宮が勤務する学校長柳原敏郎の「箱根駅伝」での涙の挫折などを交えて「教育の形」を示した。
Mimizuku: Kyoikuno Katachi (Japanese Edition)
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