本稿における中心的なテーマとなっている日本における「DV冤罪」については、今でこそ国会でも採り上げられ、理不尽な親子断絶を防止するための法案も提出されようかという情勢にもなりました。しかし、本稿を執筆した当時、当該問題に関する社会的実態はすでに浮かび上がってはいたものの、問題状況の解明はまったくと言ってよいほど手が付けられてはおらず、問題に直面した当事者たちはただただ途方に暮れる状況でした。したがって、本稿は、当該問題がどのような性格を帯びた問題であり、その問題を何とか乗り越えようとするためにはどのような方向性を進むべきなのか、不完全ながらも整理し示すことを目的として書かれました。
今回書籍化にあたって、内容そのものは、概ね当時の原稿のままです。なので、参考文献については加筆修正を加えましたが、古いものも残っています。また、文中に出てくる具体的な支援団体等についてもその後消滅し現在は存在しないものも有ります。
ただし、本稿に記述された問題状況そのものは現在もまだ存在し続けており、未だに社会的解決には至っていません。また、本稿で示された問題状況の分析と社会的解決に向けた方向性については現在もなお一定の有効性を持ち得ていると考えています。
なお、今回「あとがき」を加え、当該問題の現状を踏まえ、補足すべきコメントを示しました。また、本稿では「DV冤罪」の問題を採り上げていることもあって、「父子の引き離し問題」との表現を使用しましたが、母子の引き離し被害に合う当事者も一定数存在しており、「親子の引き離し問題」が本質的問題であることを申し添えます。
■ 目次
書籍化に際してのまえがき(第3版)
Ⅰ はじめに
1.問題意識
(1) 日本でも増加する離婚と,それに伴う「父子の危機」
(2) 「DV冤罪」という問題状況
(3) PAS(「片親引き離し症候群」、Parental Alienation Syndrome)としてのDV冤罪
(4) よりマクロな社会状況におけるDV冤罪
2. 目的
Ⅱ 方法
1. 社会構成主義的アプローチ
2.フィールド・ワーク
(1) 離婚における父子引き離し問題や、DV冤罪と直面する当事者の自助グループ
3.アクション・リサーチ
Ⅲ 事例研究
1. 躁鬱病の小説家による精神的虐待を訴えた離婚請求事件
2. DV冤罪はどのように構成された問題か:問題の要点
(1) 当事者家族,及び彼らに直接関与する人たち
(2) DV告発運動とそのカルト性
(3) 構造的暴力の一事例としてのDV冤罪
Ⅳ 考察
1. DV冤罪とは何か:個人および家族を搾取するDV冤罪という問題状況
(1) 個人および家族レベル
(2)集団および社会レベル
2.DV冤罪における問題解決の試み
3. DV冤罪に対する心理臨床家としての構え、介入を考える
(1) マクロ的視点をも踏まえた視点,査定,介入
(2) 心理臨床家はDV冤罪の問題に対し何ができるか
書籍化に際してのあとがき(第3版)
注釈と参考文献等
参考資料:親子の引き離し問題を理解するための基礎知識25
■ 著者紹介
これまで、教育分野、児童養護施設等の社会的養護の分野、そして離婚と子どもの分野を中心に業務を行なってきた臨床心理士。
主として、離婚等にまつわる親子の引き離し問題、児童養護施設における諸問題(各種の構造的な暴力状況。例えば子どもに対する向精神薬の過剰投与の問題、職員の労働問題等)に取り組む。
専門は、臨床心理学、家族療法、国際学等。社会福祉学修士、国際学修士。
最新のルポルタージュに「虐待生み出す“ブラック施設”化の実態」(『週刊金曜日』平成28年2月12日)がある。
Parental Alienation Syndrome in Japan and the cult of false domestic violence in Japan: Searching for a solution through a socially constructive approach (Japanese Edition)
Sobre
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