Risk Hedge (Japanese Edition)

２０１７年４月刊、書き下ろし小説。企業の広報部が舞台のこの作品は、２０１６年６月に刊行した「スタンド‐イン」、同年１０月に刊行した「オール‐ラッシュ」とともに、マスコミ業界を接点とした姉妹作。業界３部作とも言える。かつて幾つかの企業が経験したことをモチーフにしているが、実在の企業とは関係のないフィクションである。

巨大企業フォーチュンで広報部長に着任した山根康介は、新しく買った手帳に日誌を書き綴り、日々の記録を残していく。新聞社や放送局との付き合いも初めて、同僚たちに助けられながら次第に仕事に慣れはじめたころ、社内に激震が走る。

フォーチュンはもともと大阪・道修町を創業の地とする医薬品から始まった企業だが、技術力を生かして日用品や事務用品を製造している。数年前に電機業界５位の東光電機を買収し、販路や海外戦略を共有していまや５兆円企業となった。その東光電機に関係する良くない知らせだった。

東光電機出身の技術担当・戸山専務、マーケティングと経営企画を担当する山路常務、山根の上司であり社長室長でもある海野執行役員が中心になって、対策本部が立ち上がる。広報部としては情報を収集することはもちろん、世間にどう伝えていくかをスピーディに検討し、発信しなければならない。

対策が打ち出されようとしたとき、同僚の里村課長が山根に発言したことが、全社方針に影響を与えていく。息子の受験、妻の病気、同僚との交錯、女性との交流、さまざまな出来事を巻き込みながら、山根の激動の日々が始まる。