roujyo no yume (Japanese Edition)

白寿の老女を主人公にしたオムニバスストーリー。
老女は、夜はもちろんのこと、昼寝のときも、よく夢を見る。そのため、夢と現実との境界線があいまいとなり、現実の生活の中ではちぐはぐなことも多いが、明治から大正、昭和、平成という一世紀におよぶ人生の中で培った知恵に支えられて、物事をネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに捉え、暮らしに潤いをもたらしながら、穏やかに家族との暮らしを楽しんでいる。そうした老女を暖かく見守る家族との日常が繰り広げられる。
全部で三十二篇の物語の中には曾孫たちとの遊びをはじめ、予知夢や幼い頃の思い出など、こころ温まるものが多く盛り込まれている。
たとえば、戦争で長男を栄養失調で失っているため夢に出てくるご馳走や現代の飽食時代に想いを馳せる『ご馳走』。
あるいは、新しい時代についていくことは出来ず、携帯電話を使う孫が頭を患って独り言をいっているのだと思って心配する『携帯電話』。
また、体力が弱っているため、遠くへ遊びに行くことが出来ないが、思いつくまま行きたいところへ旅行しようと小おばあちゃんと相談し、計画をたてて、いかにも現実化するように話しあうが、それは其の時だけのことで、あとは忘れてしまっている『気晴らし話』
さらに、年老いて何もすることは出来ないが、自分に出来ることは皆の幸せを祈ることと考える『祈り』など。