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    taide okama ni damasareta: 27saidannsitaiataribakkupakkanominiokitanonnfictionandnonstopandr18siteistory (Japanese Edition)

    Por fujisawaatsshi

    Sobre

    「で、一線は越えたの?」

    と、みんなから聞かれます。

    一線を超えたのか超えなかったのか、
    どういう女性と出会い、
    どういう男性と出会い、
    どういうオカマと出会ったのか。

    本当ならひとつひとつ、丁寧に描写をしながらみんなに話して聞かせたい。
    日本からたったの4時間のタイでは、こんなにも怪しくて魅惑的な世界が広がっていることを。

    だけどそれはできないので、こうして電子書籍にしました。


    著者が2014年10月から1ヶ月間過ごしたタイで実際に経験した、
    美しきオカマたちとの7つの夜を小説化しました。


    「東南アジアでだまされた」
    「インドでだまされた」
    に続く、バックパッカーだまされ記、完結編!

    ーーー目次ーーー

    ●第一夜・アイシャ
    ●第二夜・セリーン
    ●第三夜・ナナ
    ●第四夜・コリアン
    ●第五夜・パタヤ
    ●第六夜・ジュン
    ●第七夜・チェンマイ


    ーーー冒頭を少しだけーーー

    ●第一夜・アイシャ
 

    ドンムアン空港に到着した僕は、タクシーに勢いよく乗り込んだ。弱気だとボラれるから、多少乱暴なくらいでいいらしい。



    「カオサンロードまで!そう、カオサン!わかる?カオサン!プリーズ!」



     タクシーは走り出した。

 ホテルは予約していない。「カオサンロードという、バックパッカーの聖地があるらしい。」という噂だけを聞いて、とりあえずそこにタクシーで向かった。レストランでwi-fiに繋ぎ、手頃そうなゲストハウスを予約し、キョロキョロと迷いながらも腰を落ち着けると、時間は二〇時になっていた。なにしろバックパッカー経験は無いに等しいから、ゲストハウスの見つけ方も、インターネットに繋ぐ方法もわからなくて、こうして腰を落ち着けるだけでヘトヘトになった。
    ひとつの部屋に二段ベッドが四つ置かれた、八人のドミトリースタイルの部屋だが、寝る場所が決まり、バックパックを降ろし、やっと少し心が落ち着いた。

 同じ部屋に、ヨーロッパ系のふたり組のバックパッカーが静かに座っていた。
    やけに静かだと思いながらも、

 

    「コンセントはどこかにあるかい?」

 

    と聞いても、返事は返ってこない。不思議に思ったが、すぐに理解できた。ふたりは、ろうあ者だ。耳が聞こえないし、声も出さない。手話を使って会話をするふたりがいきなりの同室者であることには驚いたが、彼らはこのように戸惑う人間には慣れているようで、すぐに自分のスマホにカチカチと文字を打って、そのスマホを僕に見せて、必要なことを伝えてくれた。「このコンセントは壊れてる。シャワー室の前にあるのを使え。」僕もそれをマネすることで、最低限のコミュニケーションはとれた。「ありがとう」


    
 同室の二人とコミュニケーションをとるのは難しいが、疲れ切ってる僕にはそんなことはほとんど関係ないし問題ない。
 数分休むと、僕の体には元気が漲り、目はガンガンに冴えてきた。

    
 日本を出たのが今朝だとか、関係ない。
    
 自分はいま、タイにいるのだ。
     タイの、バンコク。
    

 ひとりで、自由だ。
    
 日本にも、恋人はいない。

    
 
 ゲストハウスを出て大通りに出た僕は、タクシーを拾い、パッポンへ行った。「パッポン」も、言葉だけを覚えて日本を出てきた。「もう、ほんとものすごい場所だから」という話をしてくれた友人がいたのだ。

     パッポンは、バンコクで有名な風俗街のひとつだそうだ。そしてタイの風俗といえば「ゴーゴーバー」。クラブのような暗い店内で、ミラーボールが光り、広い店内はクーラーが効いてる。大音量の音楽がかかり、店の真ん中のステージで、下着だけでダンスをする、スタイルのいい美女達。男達はその周りで酒を飲む。
 酒を飲むだけでもいいし、女の子を隣に呼んでお酒を飲ましてもいい。さらに、気に入った子がいれば、「お持ち帰り」もできる。というか、店の裏や二階にそれ用の個室が用意されている店も多い。ミラーボールやレーザービームの眩しい、大音量の店内で、色っぽく踊るタイ人美女を眺め、酒を飲み、気に入ったらすぐに抱ける。男が持つ欲望を純粋に満たすためだけに作られた、世界的エンターテイメント。それがゴーゴーバーだ。

     そのゴーゴーバーが数え切れないくらいある場所。それが「パッポン」だ。これだけで、僕に「バンコクに着いたらパッポンに行くんだ」と記憶させておくには十分な情報量だった。

    

 カオサンロードからパッポンまでのタクシーには、ボラれたかボラれてないかもわからない。なにせ、つい一五時間前まで、山手線や京王線で日本円を使っていたのだ。タイのタクシーの値段が妥当かどうかなんて、判断できない。とにかく僕はギラギラの眼でパッポンの地へ降り立った。
 そこは、ゴーゴーバーの客引きと、偽物のブランド品と土産物を売る屋台が立ち並ぶ、夜でも昼のような、異様な光景だった。どのくらい異様な場所かというと、話しかけてくる人間の三人にひとりくらい、左右の目が別々の方向を向いていたり、目の焦点が定まっていなかったりするような場所だ。
そんな怪しいやつらの声がけに乗るわけもなく、僕は目的の店に向かう。そう。ゴーゴーバーだ。しかし、ゴーゴーバーの隣にゴーゴーバー、その隣にもゴーゴーバーが建っていて、どの店を選べばいいかさっぱりわからない。迷っても仕方がないので、なんとなくふらりと一件のゴーゴーバーに入った。



    そこは、聞いていた通りの異世界だった。
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