化粧品販売会社に勤める時田は、転職歴3回の40歳のしがない独身サラリーマンだ。
天神橋筋商店街の路地裏の、寂れた昭和歌謡バー『ノスタルジア』が時田の行きつけの店だ。
店のマスターは精神的なトラウマから発声障害を患っている。
時田は夜毎そのバーで、常連の売れないバンドマンや還暦オヤジ、デリヘル嬢と安酒を呷る毎日だ。
ある夜、その店にマスターの同級生だという矢吹が現れる。
聞き上手の矢吹はすぐに常連客とも顔馴染みになった。
そんな矢吹はある日時田に、退行催眠で過去の記憶を再生してみないかと持ちかける。
将来も見えず、現状にも苛立っていた時田は、もし、そんなことができるのなら、
懐かしい大学時代に戻ってみたいと思った。
驚くべきことに、退行催眠をかけられた時田は、あたかもタイムトラベルしたように、
懐かしいあの頃へ戻っていた。
それは記憶の再生というより、過去を全くそのまま五感で体感するような
リアリティだった。
記憶の中の世界で、懐かしさを満喫するに従って、時田にある疑念が生まれる。
TAIKOSAIMIN KIOKUNOKAIRO (Japanese Edition)
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