《ぼくは鞄を肩に掛けると、隣の席の今村マシンガンにお先にとあいさつをし、教室のドアを開ける。その途上で、下半身が石でもしゃぶったように重たくなったのは、ぼくが腰に巻いているベルトとおなじくらいの細さしかないすみれの腕が、ぼくの身体にすがりついたからだろう。
「ねえ、聞いてる、バターくん?」
ぼくたちの教室は、階段のすぐ前にある。この階段の傾斜は急だろうか? それともゆるやかだろうか? 誠に遺憾ながら、バリア・フリーという語が人口に膾炙する前に建てられたぼくたちの学校が擁しているのは、悉皆勢いがあるタイプの階段ばかりである。ゆえにぼくは、自分の身の安全を図るため、ようやく仕方なしに振り返った。
「へえ」》(本文より)
taketorimonogatari2016 (Japanese Edition)
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