<作品の内容>
ビジネスもギャンブルに近いところがあるでしょ?―ギャンブル好きの天才数学者・幸田が、今度はビジネスに関わる。新感覚の数学・ギャンブル小説第3弾。
吉祥寺のバー『みなさんのおかげ』に、有名コンサルタントの糸井千恵子と、フレンチレストランのオーナーシェフ・小向がやってきた。そしてそこにいた幸田は、小向のレストランに行ったことがあった。幸田は彼から相談を受けるが、やがて糸井と対峙することになる。
第1版。
文字数約23000字。
<作中より引用1>
「私、数学者なんです」
「数学者、ですか?」
「はい」
「大学の教員をなさってるんですか?」
「はい。ちなみに、幸田は遊ぶとき用の偽名なので、調べてもわからないと思いますけど」
「ああ…、そうなんですか…」糸井は笑みを見せたが、幸田のことを、どこか信用できない人間だと思った。「でも、じゃあ…、こういったお話は、専門ではないわけですよね?」
「そうですね」幸田はうなずいた。「ただ…」
「ただ?」
「世の中のいろいろなことが、数学的な視点で見るとけっこう違って見えてくる、っていうのはありますよ」
「数学的な視点、ですか…」
彼の言うことは、糸井にはどうも腑に落ちなかった。
そこで幸田が、小向の方を見て言った。
「もし条件が合えば、お金貸しましょうか?私が」
「え?」糸井の方が、思わず声を出した。
小向も驚いた顔をし、そして、確認した。
「本当ですか?」
「はい」幸田は大きくうなずいた。「お店の状況をきちんと教えていただいて、金額や利子、返済期限で折り合いがつけば、本当に貸してもいいと思ってます。ちなみに、保証人や担保はいりません」
「あ、ありがとうございます!」
幸田は微笑して言った。
「まだ、決まったわけじゃないですから、そんなに喜ばないでください」
「あ、はい…!」
「いかがですか?」幸田は糸井を見て言った。「もう少し詳しく、店の状況を教えていただけませんか?」
糸井は小向に確認した。
「どうしますか?」
「はい」小向はうなずいた。「ぜひお願いしたいです」
「じゃあ、そうしましょう」糸井も小向にうなずいた。
<作中より引用2>
1ヶ月以上が経った。2月最後の月曜の夜、いや、日付が変わり、火曜になっていた。
糸井と小向がまた、『みなさんのおかげ』に姿を見せた。
他の客は、テーブル席の中年男性3人組だけだった。
糸井たちは、誰もいないカウンター席の左端に、並んで腰かけた。
コートを脱いだ糸井は、胸元の開いた黒いニットに、ゴールドのネックレスを着けていた。けっこう胸が大きく、セクシーだと、御影は密かに思った。下はベージュのタイトスカートに、黒いストッキングを着けていた。小向は、白いシャツに黒いジャケット、茶色のパンツだった。
糸井は、プリンセス・メアリーという、ジンベースのクリーミーなカクテルをオーダーした。小向はコールド・デックという、ブランデーベースの、香りと清涼感があるカクテルだった。ともに食後に飲まれることが多い。いつから一緒なのかはわからないが、時間も時間だし、2人とも食事は済ませているはずだと、御影は思った。
糸井が御影に話しかけてきた。同じくカウンターの中にいた月子は、それを黙って聞いていた。
「幸田さんは、最近もいらっしゃってるんですか?」
「はい。あの人は、火曜と金曜の夜7時から9時まで、必ずここにいます。あ、でも、たまーに例外もありますけどね」そう言って、御影は小さく笑った。
「そんなに規則正しいんですか?」
「はい」
「そうですか…」糸井も可笑しそうに言った。「あの人…、変わり者なんですか?」
「お気づきになりましたか?」
「やっぱり…」
「そういえば…、この間、3人でお帰りになりましたよね?」
「ああ…、はい」
糸井は、小向と目を合わせてからうなずいた。小向もうなずいていた。
「どうしたんですか?あの日は」
御影の問いに、糸井は言った。
「え?幸田さんから、うかがってないですか?」
「はい。ちょっと聞いてはみたんですけど、話してはくれませんでした。でもこちらで、小向さんのお店の話をしてましたよね?あ、別に、無理にお話ししていただかなくてもいいですよ?詮索するつもりはありませんから」
「ああ…」糸井はそうつぶやき、小向に向かって言った。「あの時ここを出てからのこと、お話ししてもいいかしら?」
「ああ、はい。別に」
無言で小向にうなずくと、糸井は御影に話し始めた。
The Bet of the Genius Mathematician 3: The sweet seduction of The Mature Woman The Genius Mathematician series (Japanese Edition)
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