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    The Orange-colored Space SF Version (Japanese Edition)

    Por Yu Silic

    Sobre

    「過去を見る機械」は、なぜ未来の出来事を映し出す事ができないのか?
    不確定性原理の制約を超え、予め定められた未来の生成に挑むSF官能ミステリー!!
    『燈色の場』シリーズSF編です。


    『第77章 当事者の未来』より抜粋
    ……
    「……コンピュータシミュレーションのように、跳ね返り方が普遍的で摩擦も摩耗も無い、完全無欠なビリヤード台とボールがあれば、どんなに遠い未来の位置でも計算できるって。キューで弾かれた時点での、ボールの位置と速度が正確に分かっていればね……。つまりボールの未来は予め定まっているって事よ。もしも私たちの世界を構成する素粒子が、コンピュータの中のボールのように完全無欠なら、それらの未来も定まっている事になる、数が多すぎて計算はできないけど……。そんな話だったわ。……私、考えたんだけど、光子を衝突させて素粒子の状態を調べようとする行為自体が素粒子の状態を乱してしまうのなら、調べようとさえしなければいいんじゃない? そうすれば、もしかしたら、完全無欠な素粒子がそこに存在しているかもしれないでしょ? 温度計を入れる直前までは、本来のお湯の温度がそこに存在しているように? だから、未来は定まっていない、などとは言い切れないんじゃないかしら? だって個々の素粒子は、完全無欠かもしれないんだから……」
    ……

    『第99章 時間ループの逆説』より抜粋
    ……
    「……あのタクシーの経路だね? 実は僕は、車でここへ来た事は一度も無いんだよ。だからあれは、典型的な時間ループの逆説(パラドックス)なのさ」
    「え? じゃ、未来ログを見て?」
    「そう。僕は確かにタクシーの道案内をした。抜け道を知る機会なんて一度も無いのに、もう思い出せないくらい複雑な経路を僕が案内できたのは未来ログを見ていたからだ。もちろんログの中で道案内をしていた未来の僕だって抜け道なんて知るわけない。一度も通った事が無いんだから……。つまり僕が案内したあの抜け道の経路は存在しないはずだった。言葉を換えれば、ループの中に最初から存在していた事になる……。要するに、あの抜け道は、時間ループに特有のパラドックスなのさ」
    ……

    『第111章 時間ループの完結』より抜粋
    ……
    「刻限(10時)になった時、私が何を[する]のか、今はまだ分からないんだね?」と教授。
    「あなたが何を[した]のか、時間ループ完結後のあなたなら知ってるわ。でも今の私たちは完結前の世界にいるので、まだ何も分からないのよ。つまり記憶の改変が起きるの」
     教授が端末画面を手で指し示しながら答えた。
    「あの後、あそこで何が起きたのか、私は覚えてるよ」
    「それらの記憶も変わるはずよ」
    「どんな風に?」
    「刻限になれば分かるわ」
     教授は壁の時計へ視線を転じた。次の瞬間、刻限となり、時間ループが完結していた。
    ……

    『第113章 夢の作用』より抜粋
    ……
     ……ただし実際にそれらの過程が起きるためには、時間ループのパラドックスを解消する必要がある。虚像の手のひらに現れるはずのそれは、まだ過去の出口へは転送していないのだから……。
     時間ループが完結した後であれば問題無い。過去へ転送されたそれは、時を経た上で未来から送られて来る。でもこれから現れるはずの[それ]は、介入騒動の時の予言メールとは違い、ループの〝先頭〟のそれだ。つまり過去へ転送しようにも(転送によって生成される)時間ループがまだ存在しない以上、未来から送られて来るわけにもいかない。では手のひらの[それ]は、一体どこから来るのか?
     イメージは推測だけを語った。〝原因〟が消滅し、因果律が崩壊したにも関わらず破滅的な規模での矯正がまだ起きていないのなら、そのためにこそ現れるのだと……。
     出所は語られなかった。
    ……


    44字×20行換算 338ページ
    Twitter: @NaSilic
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