ビジネスアナリシスの現場では、対象業務の仕組み、そこに存在する概念や関係に業務ついて理解し、ステークホルダーと業務についてコミュニケーションし、隠れている課題や要求を引き出し、ソリューションを検討できることが必要です。
そこで役立つのが“ドメインモデル”や“概念モデル”と呼ばれるUML(Unified Modeling Language)を使ったモデリング技法です。UMLは、すでにソフトウェア開発では一般的なモデルの表記であり、ソフトウェア技術者を対象にUMTPやOCPUなどの認定試験も行われています。ビジネスアナリシスの分野でも、2009年に出版されたビジネスアナリシスのバイブルとも言えるBABOKⓇガイド(ビジネスアナリシス知識体系ガイド)で、テクニックとしてUMLが盛り込まれています。
本書の目指すところは、ユーザ企業のIT部門やユーザ部門が独力でUMLを活用したモデリングができるようになることです。それによってビジネスアナリシスでの引き出しやコミュニケーションが円滑になり、要件定義や要求開発やシステム開発の質が高まることをねらいとしています。
ビジネスアナリシスの現場でよくある誤りは、現場で必要な表記とモデリングという知的活動を“試験に合格することで会得できる”と勘違いしていることです。これらの試験に合格することは無駄ではありませんが、試験にはドメインモデリングでは必要ない表記もたくさん出題されますので、おのずと表記の丸暗記に走ります。モデリングについても、“モデリングした結果”の傾向を丸暗記しているだけの人がよくいます。その結果、合格者でも現場ではドメインモデルが作れないという人はたくさんいます。また、ビジネスアナリシスの現場で勉強会をして、試験に出るぐらいの内容を教えてみたら「もうお腹一杯です」という答えが返って来た経験もあります。
このような経験から、本書で扱うUMLの表記は認定試験の一番簡単なレベルよりもずっと少ないです。当然ながら、すでにモデリングを実践していて、より高いレベルを目指している人は対象読者としていません。ドメインモデリングの高レベルの本を探しているのであれば、この本はまったくおすすめしません。
一方で、モデリングの過程については、“スローモーション”のようにゆっくりと丁寧に説明するように努めました。これまでのUMLの入門書が1、2ページで説明しているところに何倍かのページを割いています。そしてスローモーションで説明したことを、繰り返したり、段階的に拡張しながら徐々に理解していけるようにしています。また説明も、“高校生でも理解できる”レベルまで難しい表現を避けて書きました。
文字数:約14900文字
UML guideline for Business Analysis (Japanese Edition)
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