『次の瞬間、あたりに水飛沫と白い泡が立ちのぼった。見なれた放送室の景色が水に溶けて、青以外の色を失っていく。
深海へ沈んでいく潜水艦の光を見ているようだった。深い海の色につつまれてコポコポとぼくの呼吸が泡になり消えていく。
その青い世界のどこか遠くで、クジラの歌が響いていた――』
中学2年生、放送委員の仲良しコンビ、マコトとコウ。二人は小学校からの幼馴染。
コウが持ってきたザトウグジラの歌が収録されたCDを聞いたマコトは、その声に刺激されて想像の翼をはためかせる。
「コウはいつだって、ぼくをどこか違う世界へ連れていく」
ある日、コウとクラスメートの女の子サワさんが仲良くする姿に、思わずつっけんどんな態度をとってしまったマコト。
幼馴染のコウへの気持ちが、友情ではない別のものに変化していることに気がついていく――。
『ザトウクジラって歌うんだ……クジラたちは、なんのために歌うんだろう?』
うっかりすると頭の中が小旅行に出かけてしまう空想好きの少年マコト。
『タイムカプセルに夏を閉じこめてさ……何十年も何百年も。おれらの夏がずっと続けばいいよな』
いつも頭の中が何かへの興味で溢れている幼馴染の少年コウ。
『わたし、羨ましいの。マコトくん、コウくんといるときが一番嬉しそうなんだもん』
いつも静かに読書をしているけど、ときどきドキッとすることを言いだすクラスメートの女の子サワさん。
放送室から流れ出すどこか懐かしい音楽や、夏の叙情的な風景に彩られながら回る恋のトライアングル。
宇宙や海のイメージに溢れた小さな初恋のお話です。
巻末に表紙作者ふしみさんによる作品コンセプトボード付。
文庫本1/3ほどの作品です(原稿用紙換算120枚)
※本作品は2011年11月、第13回文学フリマにて発行された『SUMMER CAMP Vol.3』に収録された同名の作品を加筆修正、再構築し、電子書籍化したものです。
Whale in July (Japanese Edition)
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