Workshop Suzui (Japanese Edition)

　作業服専門店で奮闘する男の物語！
　実店舗やネットショップに興味のある方は必見です！

　作業服専門店で働く豪田は、罵詈雑言を浴びせる自己中心的な経営者で、
社長婦人の専務に悪戦苦闘しながらも期待に応える。
だがその過酷で理不尽な要求はエスカレートし、ついていけない
パートさんたちは辞めてしまう。競合店の価格競争で売上が低迷する中、
社長指示もあり豪田はネットショップ開店を経営会議で提案する。
だが専務の反対を聞くと、社長は手のひらを返してネットショップを
見合わせる。そしてひょんなことで休みの日に怒りの電話をかけて来た
専務のやり方に激昂し、豪田は退職願を提出する。
豪田には厳しく当たっていた専務だったが、それは評価の裏返しだった。


　豪田は禿げていた。
　
　否、表現を間違えた。豪田はハゲにしていた。自ら、意図的に、だ。
スキンヘッドと言った方が適切な表現だ。最初からそう書けばよかった……。
ここで留意して欲しい事がある。どこからどこまでが頭部とおでこの境界かは
本人が一番知りたいところだ。街ですれ違うことがあっても、
それだけは訊ねてはならない。さらに通常、人は猛省をするときには頭を丸める。
アイドル歌手がイケメンと恋仲になったのがバレて自分で坊主頭にして動画サイトで
謝罪する光景は過去に散見されたが、豪田に関しては、それでは反省にならぬ。
逆に「ロン毛にせよ」と命じられる方がよほど過酷だ。
武士の散切り頭より荒んだ光景が待ち受けている。男気があるが故の半端な
ホルモンバランスが憎らしい。なぜ完全なる禿頭に産んでくれなかったのか。
親に対する恨みはそれだけだった。

　しかるに豪田の頭髪に注ぐ時間には並々ならぬものがあった。
一日でもサボタージュするものならうっすらと歪な散切り頭のシルエットが浮かび上がる。
何と悲惨な事よ。故に彼は毎朝のヘアカットに油断が無い。
　だが、これから記す話に豪田の頭髪のことは一切関係がない、どうでもよい事だった。
そう。ハゲなんて、一切気にしなければいいのである。（だったら書くなよ……。）
（本文より一部抜粋）