一年半前、江戸にタイムスリップする、という体験をした主人公。その経験は彼にとって大きく、前向きに現代を生きるための糧になっていた。
そんな折、江戸で世話になった勝海舟の存在が頭をよぎる。歴史書をめくり思い出に浸ろうとすると、刻まれた歴史に"勝海舟"という存在が無いことに気が付く。その違和感を拭う間もなく日本が植民地であるというテレビの音声が耳をつく。
「歴史が変わっている」
勝海舟が活躍した幕末も、恋人と過ごしていた独立国家日本も、初めから存在しなかったかのごとく、消え去っていた。
そして、再びの江戸へ。
勝海舟が名を馳せて"いない"、幕末。
まずは、当の本人、勝海舟と接見する。この歴史の"変"について尋ねなければ始まらない。主人公は語気荒く勝海舟に迫る。そこで語られた新しい歴史は、現代を生きる者としてスンナリと飲み込むことは難しかった。とはいえ、勝海舟には彼なりの理屈があり、苦悩の果ての歴史の改変であった、と、そう告げられてしまう。
海舟の言葉を聞きながら、しかしその決断が招いた結末に得心がいかないままの主人公。海舟が「諦めた」エンディングにたどり着くために、何が出来るか、何をすべきか頭をめぐらせる…。
日本の、世界の、行く末を思いやるのは、勝海舟や主人公たちだけではない。主人公が目指す「本来の」未来を阻もうとする勢力が、その命を狙う。
勝海舟を翻意させるべく、自分に出来ることを模索する主人公。やはり自らの職業である美容師を最大限に活かし、その創意と熱意を表現することで、その想いを勝海舟に届けようと決める。
未来から来た主人公にとって、行動の基礎は未来での経験である。しかし、"模倣でないオリジナル"という難題を突きつけられ、その経験を超越した場所への到達を目指すことになる。今までとは異なる思考を求められ、その苦闘は極まっていく…。
ふとしたキッカケで、「この瞬間、今いる時代を生きる」ことの大切さに気が付いた主人公。経験に新規性を掛け合わせた髪型を編み出す。努力と工夫で、一種、"時代を変えた"ことを見せ付けた主人公は、勝海舟の決断を変えさせることに成功する。しかしそれは、勝海舟が避けようとしていた悲劇的な未来への道を残したことになる。つまり、勝海舟の決断に頼ることなく、その悲劇の回避に向けた決死の行動が必要になる、ということだ。
勝海舟から"決意のバトン"を引き継いだ主人公は、その想いを胸に、現代という、自らの今に戻っていく。これからの行動が、世界の破滅に向かわぬよう、未来を刻み続ける世を、作っていくよう、走り続けることになろう。その、想いの強さで作られた表情で、物語は終わる。彼らの物語は、これからも続いていく…。
BAKUMATSUSIZA-SUTU- (Japanese Edition)
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