P100号油彩で北インド・ラダックのマンダラを描く。それは魂の衝動とでも言うべき、やむにやまれぬ思いだった。そのマンダラを軸にした個展を開催したところ、奇妙な出会いが続く。その出会いはやがて、インド大使来仙、インド大使館での個展、インド民俗画展の開催へと展開してゆく。時代は昭和から平成へ。私=松岡繁のノンフィクション物語。
○第1章/ラダックブルー
魂の衝動とでも言うのだろうか。
人は時として止むに止まれぬ思いに
突き動かされて行動する事がある。
私の場合それは、油彩画で北インド・
ラダック地方に伝わるマンダラを
描く事だった。なぜラダックの
マンダラだったのかは、自分でも
よくわからない。制作には丸一年
かかった。
○第2章/泥沼の夏
どういうわけか私は、故郷仙台で
フリーライターになっていた。
元大日本帝国陸軍曹長の自伝を、
聞き書き執筆する仕事を手がけ
ていた。質量共に膨大で、これも
1年がかりの大作となる。そんな
中、離婚寸前の友人が毎晩の如く
我が執筆部屋を訪れ、愚痴りながら
酒を飲んでいった。私は「悪魔が
来たりて酒を飲む」と名づけた。
○第3章/花火のように
「そうだ、個展を開こう」。仙台
七夕の花火を見ていて閃いた。ドン
と鳴った花火だ、綺麗だな♪と、
パッと咲いてパッと散るのも悪く
ないと思っていた。
○第4章/祭りだわっしょい
100号のマンダラを軸にした
「オリエンタルカーニバル」と
題した個展を、仙台フォーラス
のギヤラリーで開催し、成功の
うちに幕を閉じた。ホッとした
息抜きに、私は東京・目黒美術館
で開催されていた「インド現代
美術展」を見に行った。そこで
出会ったのは、謎のインド人
グループだった。そのうちの
一人は、日本語が堪能なインド
大使館2等書記官だった。彼曰く
「ここ(インド大使館)で個展
やりませんか?」
○第5章/謎の音楽集団
絵画と音楽と舞踏のコラボレーション。
私の昔からの念願だった。仙台の個展
で知り合った奇妙な風体の音楽家も、
そんな事を言っていた。私はインド
大使館個展を手土産にして、彼の家
を訪ねた。彼は篠笛や和太古とシンセ
サイザーを扱う音楽家であり、舞踏
とのセッションも試みていた。幻影
舞楽団という、なんとも怪しい名前
ではあったが・・・
○第6章/困った時の柏餅
インド大使館の話は公使扱いとなり、
順調に準備も進んでいた。だが大使
の一言で、幻影舞楽団のパフォー
マンスがボツになるというアクシ
デントが発生。私は日印協会の人々
と対策に大わらわになる。しかも
その大使が一家で仙台へ旅行に来る
という。私はそのコーディネート役
を引き受ける。
○第7章/南無八幡大菩薩
私は幻影舞楽団のメンバーと共に、
インド大使館に乗り込んだ。一週間
にわたる個展と公演が始まった。
○第8章/月も昇るし陽も昇る
予測不可能な出会いを重ねつつ、
ようやく平穏な時が訪れた。この
時期最も印象的な出会いはインド・
ミティラー地方の民俗画の描き手で
ある、2人の女性だった。彼女たち
は、朝沐浴して太陽に祈り、細い竹
に墨をつけて無心に絵を描いていた。
それはシンプル偉大なる魂だった。
DAIMANDARAKI (Japanese Edition)
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