斎藤茂吉の第十二歌集『寒雲(かんうん)』の電子書籍です。錯入歌の入れ替えがなされた第四刷(昭和16年8月刊)を底本としました。
昭和12年から14年、作者55歳から57歳までの歌1115首を収めます。
『白桃』『暁紅』と共に中年期の三大歌集を成し、その掉尾を飾るに相応しい、充実した内容の歌集です。
題材は多岐にわたりますが、時局柄、新聞やニュース映画に拠った戦争関連の歌がまず目に付きます。身辺的には、妻との別居状態が続き、永井ふさ子との関係が続いていた時期のため、恋愛感情をひそませたと思われる歌が少なからずあり、また大著『柿本人麿』をほぼ完成させた時期にあたって、人麿研究にまつわる歌も多く含まれています。
おびただしき軍馬上陸のさまを見て私(わたくし)の熱き涙せきあへず
恋ひおもふをとめのごとくふふめりしくれなゐの梅をいかにかもせむ
人麿がつひのいのちををはりたる鴨山をしもここと定めむ
また、歌人塚本邦雄などに高く評価された、奇想の作が多いことでもよく知られます。
むらさきの葡萄のたねはとほき世のアナクレオンの咽を塞(ふさ)ぎき
洋傘(かうもり)を持てるドン・キホーテは浅草の江戸館に来て涙をおとす
(本書では、カッコ内はルビとして表示されます)
各歌集の単行本から新たに本文を作成し、二度の全集によって校訂した、斎藤茂吉全歌集シリーズ(全18巻を予定)の第12巻にあたります。
本文はリフロー型の電子テキストですので、語彙検索や文字サイズの拡大縮小、メモ機能・辞書機能などがご利用になれます。
Kanun Saito Mokichi zen kasyu 12 (Japanese Edition)
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