Kobeshitamachimonogatari7 (Japanese Edition)

「神戸下町物語」シリーズ第７篇。１９６０年代半ばから１９７０年代初め、俺は小学生だった。読売ジャイアンツが９年間連続して日本シリーズを制覇したＶ９の時期、グループサウンズと呼ばれたバンド音楽が流行し、小柳ルミ子が「わたしの城下町」で、南沙織が「１７歳」でデビューした時代。日本の国力は発展途上で年率平均９パーセント台のいわゆる高度成長期の後半、固定相場制だった対ドル円交換レートが３６０円から３０８円へと変遷する時代。戦後日本の貧しさが母斑として残り、一方で佐藤栄作総理大臣が三次にわたる長期政権を担って日本が驀進していた時代。あの頃はそんな世間の動きに気づかず、いつまでも時間が止まっていると勘違いしていた小学生。
友人たちの名前など、個人を特定するものは仮名としたが、これらの文章は全て実際の出来事だ。神戸市長田区の下町で、俺はその時代にこうやって過ごしていた。