著者初の小説。「ナヲミ」3部作の第3弾、完結篇。
1985年秋、僕は日常を忙しくしながら色んな体験を重ねた。印象的な何冊かの本を読み映画も観た。沢木耕太郎の著書、ローマ・クラブの「成長の限界」、村上春樹の何冊か、アナール派と呼ばれる歴史家の著書。女性二人に誘われてオランダ映画を観た。これらの蓄積は自分の興味の「おさらい」でもあった。
トウキョウに移り住んだナヲミと会う機会はなかなか作れない。1986年の初夏は、韓国・台湾、沖縄への船旅に出た時にチェルノブイリの原子力発電所の事故を知る。同じ年に通い始めたコピーライター養成講座で、他の生徒の情熱を感じるなか自分自身の可能性を探る。千葉の友人宅では、同じように泊まりに来ていた同年の女性との出会いを楽しむ。そして久しぶりに彼女に会ったのはダイカンヤマでのほんのひとときだった。
夏休みに行った山奥の農家でも、同期の友人たちと行った飛騨の祭りのさなかでも、直前に会うことが叶わなくなった神奈川でも、僕はナヲのことを考え続けた。そしてようやくダイカンヤマ以来、渋谷の街で再会した僕たちは、夜中まで飲み歩きながら、お互いの存在の重要性を確認していく。
私のアパートで二日間か三日間、一緒に過ごしたい。そう言って電話をしてきたナヲはどこか精神的に不安定な部分を感じさせた。ディズニーランドに行って、駅前のおでん屋でお酒を飲んで、銭湯の帰り道で震えながら一緒に過ごそう。そう言ってきたナヲがこれからどう生き、僕がそれにどう関わっていくのか。僕はさまざまに思いを巡らせる。
Nawomi yatsutosugoshita hachijuunendai tokyo-hen (Japanese Edition)
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