Ribapuurumitaini zenpen (Shousetsu) (Japanese Edition)

　坂口拓郎は松山市の高校三年生。六月も半ばになり、クラスメイトが大学受験に気持ちを切り替えていくなか、彼は将来にこれといった目的を見出せないでいた。ある日、四〇年来ビートルマニアであり、現役で東大合格（文科系）した父親（現在、家業の大工を継いで棟梁）から、ビートルズのようになれと言われる。拓郎は一瞬おちょくられているのかと苛立ちを覚えるが、父親のアドバイスに不思議と心地好いロマンを覚える。一攫千金を夢見る彼は、父親にどうすれば良いかと訊ねる。しかし、父親はミュージシャンではなく、イギリスで一山当てた小説家を例に挙げ小説家を志してみてはと提案する。　安易に作家を志した拓郎は、翌日、そのことをクラスメイトの森田桜子に知られてしまう。日本とポルトガルのハーフの桜子は、現役高校生ながらモデルとして全国的にファンが大勢いた。そんな彼女からある文学賞に応募してみたらと勧められる。それは地元松山市が主催する【松山市主催新人作家発掘小説大賞】という非情に趣旨が明確な公募だった。賞金は百万円。この百万をかっさらおうと大きな目標を掲げた拓郎は、一人では到底無理だとわかり仲間をかき集める。数々の俳句コンテストで入賞経験豊富な１組の宮沢政志。国語においては全国模試で常に上位二〇位以内に君臨（学内では常にトップ）する３組の加藤仁志。同じく３組の驚異的な速読法を身につけた留年生、Ｓｔ．武田修の四人で作品を書き上げようと動きはじめる。