fuchuukeimushoyori the923rd (Japanese Edition)

本当の悪とは国の法律で裁けない者たちの事を言う。法律で裁かれて刑務所に送られるのは殆どの者が、法律違反をしただけであり、国によっては日本で悪いとされる事が良いとされるのである。
　但し、刑務所に送られた者の中にも本物の悪党はいるが、本物の悪党はこの社会にいて大手を振り、自分の思い通りに政治を動かし、社会を吾もの顔で闊歩しているのである。
　法律で裁いても裁ききれない様々な人脈と閥、そしてサンクチアリ化させるまでの思想と資金を持って時には、慈善事業などして善人顔をしている。
　この様な者を内閣特命処罰人が、内閣調査室の特命を受け処刑して行くのが、この物語である。
　内閣特命罰刑人・繁松久仁が、刑務所の中にいて内閣の特命を暗号で受けると自ら反則行為をして懲罰を受け、懲罰期間中に本当の悪党を粛清するのである。
　昭和三〇年生まれ五八歳・やや痩せ気味で細面、府中刑務所内では何時もボーッとして作業をしている事から「マツボー」と仲間に呼ばれている。
　部屋は夜間独居でマツボーが、一人でいる姿は、夜勤看守が時々見回るだけで誰も解らない。部屋に備え付けのテレビは観ず、新聞も読まない。確かであるのは、朝晩２時間ずつ坐禅らしきものをしているという事だけである。
　完全に己を隠しきって刑務所生活をしている久仁が、悪に対しての粛清に向う時、本当の正体が分かるのである。