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    Kankeisya (Japanese Edition)

    Por Rootport

    Sobre

    ■内容■
    インタビュー形式の短編ミステリー小説です。
    芥川龍之介『藪の中』や、宮部みゆき『不文律』のような形式で書かれています。

    ■書き出し■
     東京都H市在住・主婦(62)
    「まさか一生のうちに自分がこんな目に遭うとは思っていませんでした。だって、死体の第一発見者でしょう? こんなこと誰にも言えませんよ。市役所で短歌の会をやっているんですけれど、参加されているみなさんも、しばらくはこの話で持ちきりでした。もしも『私が第一発見者です』なんて言ったら、みんな腰を抜かしてしまうんじゃないかしら。だから、このことは家族と警察の方にしかお話ししていません。これ、匿名にしていただけるんですよね? 本当に今になっても鳥肌が立ちます。もう二度とあんな経験はしたくありません」

     東京都O町在住・寺島正蔵(73)
    「あのね、迷惑してるの。あの山はさ、祖父の代から私んちの山なんだよ。でも、こんなことは今まで聞いたことないよ。人の土地で死ぬなんてさ。だいたい最近の若い連中ときたら、他人のことを考えないでしょう。勝手にあの山に入って遊ぶやつらは珍しくないんだよ。だから見回りにも気を遣っていたんだけどさ、ちょうどあの頃は風邪をこじらせてしまってね。晴天が続いていたから、無断で山を荒らしていくやつらに目を光らせていなくちゃいけなかったんだけども……。ああ、ハイキングですか? あれは大目に見ているの。ちゃんと挨拶に来るし、若い人間はほとんどいないから。――困るのはやっぱり十代、二十代の子供でしょう。知らぬ間に入り込んで、さんざんゴミを散らかしていく。あの山で死んでいたのも高校生だったんでしょう? ほんと、嘆かわしいよ」

     都立A高校教員・遠藤昭子(46)
    「ええ、七彩さんはよくできる生徒でした。授業にも部活動にも積極的に参加していましたし、二年生の時には文化祭の実行委員をしていました。純朴で、クラスの誰からも好かれていました。――え? 自分の生まれについて? そんなことを気に病むような生徒ではありませんでした。今年の合唱コンクールでも、面倒見よくクラスをまとめていましたよ。この学校では毎年六月にクラス対抗の合唱大会をするんです。練習の計画を練ったり、歌の苦手な生徒を手助けしたり、積極的に仕事をこなしていました。そんな彼女が、どうしてあんなことに巻き込まれたのか……」

     都立T高校・下校中の生徒
    「あー、やっぱりすごいな、ああいう事件が起きちゃうと」
    「これって戸崎英の取材?」
    「ねえ、お姉さんって記者なの? 新聞? 雑誌?」
    「へえ、すげー」
    「戸崎英は、なんか大人しいヤツだった」
    「やっぱさぁ、グループみたいなのがあるんですよね、この高校にも。あいつは俺たちのグループじゃなかったから、よく判らないです。なんていうのかな、同じクラスって言っても、グループの違うやつは、もう隣の国の人みたいな? ぜんぜん別の人間でした」
    「つーか、あいつに他校のカノジョがいたなんて信じられねえよなー」

     東京都H市在住・第一発見者・主婦(62)
    「あの日は久しぶりにハイキングに行ったんです。――はい、いつもの四人でした。寺島さんには以前からお世話になっていましたから。ええと、初めてあの山に行ったのは、もう二十年も前のことです。その頃から、近所の主婦仲間と一緒にお邪魔していたんです。あの山は、ここから電車で三十分ぐらいで行けるでしょう。思い立ったその日に突然うかがうことも珍しくありませんでした。
     あの日もそうでした。
     朝起きたら、とても天気が良くて。そういえば寺島さんのお顔を、しばらく拝見していないな。お元気だろうか。そう思ったんです。電話をさしあげたら、お風邪を召しているというお話しでしたから、心配になってしまいました。ここ二、三日は山の見回りをしていないから、それもかねて山に入ってくれないかと言われました。『風邪なんぞ寝ていれば治る』とおっしゃっていましたよ。
     ハイキングの道順は決まっていました。以前から寺島さんに教わっていたんです。教えたとおりの道を行かないと、すぐに迷うだろうと言われていました。とくにあの崖に登ってはいけないと、きつく注意されていました。この季節には、積もった落ち葉のせいで、どこまでが足場なのか分からなくなるそうです。ですから、崖の下を迂回するのがいつものハイキングコースでした。
     あの日は崖の下に近づくたび、だんだん変な雰囲気を感じました。
     いつになくカラスが多くて、妙な臭いもして。これはきっとイノシシでも死んでいるのかもしれない。そう思いながら通り過ぎようとしたんです。すると人間が二人倒れているのに気づいたんですよ。ちょうど崖の真下でした。最初は、崖から滑り落ちたんじゃないかと思ったんです。いけない、助けなくちゃ。そう思って近づいたら、そうしたら、頸に包丁が……」

     救急救命士(匿名)
    「こういうインタビューには答えちゃいけないことになってるんですよ。だから本当、お願いしますよ? 名前とか出ちゃったら、マジでヤバイんで。
     あの二人は、どう見ても即死に近い状況でした。
     女の子のほうは頸動脈が切断されて、咽頭部まで破壊されていました。ええ、あのナイフでひと刺しだったと思います。え? 包丁? ああ、確かにナイフってよりは包丁かもしれませんね。どちらにせよ先の尖った刃物でした。警察の発表通り、他殺で間違いないと思います。……その点、男のほうはビミョウですね。外傷はすべて崖からの転落によるものに見えました。司法解剖の結果は知りませんけど、俺の見た感じでは、致命傷は頭部打撲による脳内出血じゃないですかね。
     ほら、週刊誌なんかだと無理心中みたいな書き方をしているでしょう。だけど俺には、ちょっとピンと来ないんですよね。今の若いやつらって、そういうところはドライだから。ましてあの二人は高校生だったんでしょ?
     うーん、でも相当に追いつめられたら、人間って何をしでかすか解らないからなぁ。
     俺がこの仕事についてすぐの頃、ある女性を救護したんです。地震で半壊した木造家屋から逃げ出してきた女性なんですけど、肩を脱臼していました。訊けば、倒れてきた樫(かし)のタンスを受け止めて、放り投げたっていうんです。火事場の馬鹿力っていうんですか? おかげで彼女は助かったけれど、肩の骨が抜けてしまった。筋肉が異常な強さで働いたから、骨が耐えられなかったんですね。これは身体の話ですけど、精神的なものでも同じじゃないですか。危機に陥った人間は、思いもよらぬ行動ができるんだと思います。もしも本当にあの二人が無理心中なのだとしたら、めちゃくちゃ追いつめられていたんだと思いますよ。
     それで、実際にはどうだったんですか? テレビにもネットにも流れないような情報を知ってるんでしょ? あの二人、本当に心中だったんですか?……
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