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    Kakurennbo (Japanese Edition)

    Por Rootport

    Sobre

    ■内容■
    短編ホラー小説です。とある小学校が廃校になったいきさつを、年老いた用務員が語ります。

    ■書き出し■
    さあ、どうぞ上がってください。
     狭くて汚い部屋ですが、冷たい麦茶ぐらいならお出しできますから。
     この小学校が廃校になって、もう三年になります。今では児童もいなくなって、使われている部屋といったら、この用務員室ぐらいですよ。そうです、私のような老いぼれが、たった一人で管理しております。
     ああ、驚かれましたか。ここにある筆箱やらカバンやらは、みんな誰かの忘れ物です。もう誰も取りに来ないでしょうが、もしものために残してあるんです。年寄りの未練がましさなのかもしれません。子供たちがこの部屋へ遊びに来ていた頃を、忘れられないのです。ひょっとしたら、少し大人になった生徒たちが取りに来てくれるかも知れない、そう思うと捨てられないのです。
     ささ、どうぞお座りになってください。
     ずいぶん色褪せてはいますが、きちんと虫干ししてある座布団ですので。
     ええと、あなたは大学院生だとおっしゃいましたね。ずいぶんとお若くお見受けしますが――、そうですか、博士課程でいらっしゃいますか。いやあ、こんな偉い人をこの部屋に入れるのは初めてですよ。いったいどんな研究をなさっているのですか。
     はあ、ドーナツ化現象による都心部の教育環境の変化……、ですか。やはり偉い研究をなさっているのですねえ。ああ、なるほど。確かに今、都心の小学校がどんどん廃校になっていますね。都市部では子供の数が減っていると、耳にしています。難しいことは解りませんが、私のような者には胸の痛む話です。街から子供たちの姿が消えていっているのですから。へえ、それをご専門に研究されていると。
     おや、壁がどうかなさいましたか。
     ああ、そのタピストリーですか。なるほど見事な造形ですよねえ。
     いやとんでもない、私のような無骨な男に、こんな趣味はございませんよ。このタピストリーも生徒から貰った物です。……素晴らしいでしょう。とても小学生が作ったとは思えない出来映えでございましょう。今では私の宝物です。用務員だった私ですが、たくさんの子供たちが懐いてくれましたから。
     ほう、あなたの姪御さんも小学校で手芸クラブに入ってらっしゃるのですか。はは、このタピストリーを作ったのは特別に才能のある子でしたから。ええ、普通の小学生には、こんな繊細な刺繍なんてできませんよ。
     それにしても蒸し暑いですな。もう八時だというのに。
     このクーラーもぽんこつで、なかなか涼しくならんのです。ああ、ひどい汗だ。タオルをお貸ししましょうか。いいえ、ご自分のハンカチで充分だなんておっしゃらずに。
     すいませんねえ、せっかく来ていただいたのに、こう暑くてはお話もままなりませんね。この部屋はとくに蒸すんです。学校の裏に古い用水路がありましてね、この時期は蚊が湧いて、窓も開けられません。来るときにごらんになりましたか。両岸をコンクリートで固めた、汚い小川です。あれでも昔は、蛍が飛び交うほど綺麗な流れだったんですよ。毎年、夏になると子供たちが集まりまして……。
     すっかり話が脇にそれてしまいました。申し訳ございません。
     この学校が廃校になったいきさつ、ですね。
     ――分かりました、お話いたしましょう。
     けれど、お役に立てるかどうかは判りませんよ。何しろこの学校は、いくぶん特殊な経緯で廃校になりましたから。
     他の小学校のように、地域に暮らす子供の人数が少なくなったのではありません。
     確かに昔と比べれば、多少は減ったでしょう。けれど今でもこの地域には、たくさんの子供たちが住んでいます。
     しかし、ある事件をきっかけに、誰もこの学校へ通わなくなったのです。
     それまで通っていた子供たちも、隣の学区の小学校や、近くにある私立小学校へ転校してしまいました。表向きにはどの親も「あの学校にはいい教師がいる」だとか、「あの学校は英語教育が進んでいる」だとか、色々な理由をつけて転校させていきました。ですが、この学校を避けているのは明らかでした。
     そうやって人数が減っていき、ついに廃校が決定されたのです。
     はあ、どんな事件だったのかと。ええ、私は当時からこの学校に勤務しておりましたから、あの事件のことはよく覚えています。
     児童たちが何人も、立て続けに行方不明になったのです。夏休みを直前に控えて、この学校の児童が五人、こつ然と姿を消したのです。
     当時はマスコミもだいぶ騒ぎ立てましたが、覚えておいででしょうか。
     そうですか……。まあ、世の中の流れは速いものですから、忘れてしまうのも無理ないでしょう。大都会の隅っこで子供が何人か蒸発したぐらいでは、もう誰も驚かない時代ですから。けれど当事者だった私には、決して忘れられない事件です。
     消えた子供たちはどこに行ったのか、マスコミは空虚な推理を重ねました。
     隣国の工作員に拉致されて、南方へ売り飛ばされただとか、猟奇犯に殺されてしまっただとか、聞いているだけで胸のむかむかしてくるような話ばかりでした。なにしろ痕跡の少ない事件でしたから、いったい何が起こっているのか、誰にも分からなかったのです。それで余計に、テレビや雑誌の憶測が乱れ飛んだのでしょう。中には宇宙人に連れ去られたなどという荒唐無稽な話すらありました。
     ただ、消えた子供たちが、どうやら酷い目に遭っていたということだけは判りました。そして被害に遭っているのが、この学校の児童だけだということも。
     だからこの地域の人たちは、子供をこの学校に通わせなくなったのです。
     ――え? ああ、そうですね。
     これだけ話しただけでは、何がなにやらさっぱりでしょう。申し訳ございません。
     わかりました。私の知っているすべてのことをお話しいたします……
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