Ishii Takayuki no Yuurisuryoushi Kenkyu (Japanese Edition)

０．はじめに
　日本語では、「三人（の）」とか「三本（の）」は数量を表すので、数量詞と言える。これらと次の文との組み合わせを考えてみよう。
　　(1) 友人がワインを持ってきた。
　「三人」と主格の「友人が」との組み合わせは、次の５つが可能である。1
　　(2) a. 三人の友人が
b. 友人の三人が
c. 三人友人が
d. 友人三人が
e. 友人が三人
　このうち、(2b)は「友人（が三人以上いて、そのうち）の三人」と解釈することも可能なので、他のものとはニュアンスが異なる。従って、同じ意味を表すのは、(2a, c, d, e)の４つということになる。これらのうち、(2e)における「三人」が主格のNP「友人」からは遊離しているので、遊離数量詞と言われる。2
「三本」と対格の「ワインを」との組み合わせについては、次の４つが可能である。3
(3) a. 三本のワインを
b. 三本ワインを 4
c. ワイン三本を
d. ワインを三本
　勿論、(2e)と同様の振る舞いをしている(3d)における「三本」は遊離数量詞である。
　ところで、(2c, d)と(3b, c)の「三人」や「三本」は、それぞれ「の」でNPと接続されていないので、遊離数量詞と考えてよい。
本稿では、遊離数量詞（Floating Quantifier：以下FQと略す）を含むこれらの数量詞とNPとの関係を考察し、主としてFQの統語的振る舞いを説明する原理を提案することを目的とする。