先ずは小松姫の演武からだ。
会場からは、
「もしかして、アレが見れるのか?」
「父親ゆずりの "蜻蛉切(とんぼきり)" か?」
「確か、天下三名槍の一つだよな?」
と急に会場がザワつき始める。
小松姫は手ぶらで試合会場に登場したが、後ろを振り返り合図を送ると侍女たちが大きな平たい桐の箱を運び込み台の上に置き、小松姫が中身を取り出した。
その途端、会場から歓声が沸きあがる。
「やっぱり蜻蛉切だーっっ!!」
「本多忠勝様の再来だー!」
会場は割れんばかりの拍手である。
そんな雰囲気の中、小松姫の演武が始まるが、小松姫のそれはもはや芸術に近かった。
小松姫が合図をすると、高い梯子の上に控えていた侍女が、非常に薄い和紙、現代で言えばティッシュペーパーのような紙をフワリと空中に投げる。
それを小松姫は手にした蜻蛉切ですくうように取るのだが、ここで信じられない光景を目にする事になる。
通常、刀でも槍でも薄い紙をすくおうとすると紙は刃に絡まるものだが、この蜻蛉切は違った。
スウーと真っ二つに奇麗に切られるのであった。
侍女が梯子の上から薄い和紙を蒔き、小松姫が蜻蛉切を空中で動かすと和紙はどんどんと細かく裁断され、やがては桜吹雪のように小松姫の周りを舞う。
地面に落ちた和紙の砕片も、小松姫が地面をすくうと蜻蛉切の風圧で再び空中に舞い上がる。
小松姫の美貌と蜻蛉切の優雅な動きと和紙が織り成す、もはや幻想的な世界が会場の中で繰り広げられた。
会場にいる全員がポカンとした表情でこの幻想的なショーを見ている。
やがて、小松姫の演武が終わると割れんばかりの拍手と歓声が吹上御苑の空に響いた。
(本文「幻の御前試合」より抜粋)
Jyuumannen no Kyuuetuki sono go (Japanese Edition)
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